人間椅子、「バンド生活三十五年 怪奇と幻想」ツアーファイナルで烈しく大団円
BLACK SABBATHの「Paranoid」のミニ・セッションも
ショウの中盤は「恐怖の大王」や「水没都市」といった人間椅子にしか描けないような美しいヘヴィネスでファンを魅了。現実離れした轟音に文学的な歌詞が乗るさまが痛快なのだ。今夜のセットリストは、このバンドが紡ぐ光と闇のコントラストを存分に伝える内容だったと思う。この時点で、オーディエンスは相当お腹いっぱいだったはずである。 人間椅子がワールドワイドに注目される一因ともなった「無情のスキャット」が高らかに響きわたると、いよいよライブも終盤へ。ナカジマが有り余る元気をこれでもかと見せつける「赤と黒」で場内の一体感は更に増した。人間椅子初期の楽曲「天国に結ぶ恋」で和の情緒豊かに世界を構築すると、最後は定番中の定番「針の山」でド派手に本編を締め括った。 当然、オーディエンスは日本が世界に誇るロック・バンドの音楽をまだまだ味わいたいと願う。その声に応えて、3人が再び姿を現わした。和嶋は今年ギブソン社より提供されたというエクスプローラーを、鈴木は同社提供のグラバー・ベースを構えていて、新鮮な構図だ。ここで即興的にBLACK SABBATHの「Paranoid」のミニ・セッションが始まると、場内は興奮状態に。いかなる時もサービス精神を忘れないのが人間椅子である。 まずは「神経症 I LOVE YOU」で軽快にフロアの熱気を操れば、続く「地獄風景」で拳を突き上げ、体を揺らす観客が続出。ラストの土着的かつ劇的な「どっとはらい」が本ツアーのタイトル〈怪奇と幻想〉に相応しい余韻を生んだ頃、時計の針は午後9時20分をさしていた。 この35年間、人間椅子が数々の苦難を乗り越え、絶えず進化してきたことが証明されたライブだった。痒いところに手が届くようなレア曲満載の内容ではあったが、レア曲をレア曲と感じさせない点に彼らの熟練の技術と心意気を感じた。人間椅子には、これからもありのままのヘヴィネスを貫いてほしい。その先に見える景色はきっと晴れやかなものとなるに違いない。そう確信した、貴重な一夜だった。 メンバーがMCで述べていたように、来年はオリジナル・アルバムの制作期間に入るそうだ。日本が誇る爆音ロック・バンドの未来が待ち遠しい。 TEXT BY 志村つくね PHOTO BY 西槇太一 <リリース情報> 人間椅子 New Blu-ray & DVD『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』 発売日:11月13日(水) 品番:TKXA-1146(Blu-ray) / TKBA-1411(DVD) 価格:7500円(Blu-ray) / 6500円(DVD) 映像① 2024年春のワンマンツアー 「バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~」EX THEATER ROPPONGI 2024/04/24 1. 幸福のねじ 2. 爆弾行進曲 3. 品川心中 4. あやかしの鼓 5. マダム・エドワルダ 6. 蟲 7. 命売ります 8. 太陽黒点 9. 死出の旅路の物語 10. 悪魔の手毬唄 11. 深淵 12. 地獄小僧 13. 宇宙電撃隊 14. 針の山 15. 蛞蝓体操 16. 無情のスキャット 17. なまはげ 映像② バンド生活三十五年記念~ブートレッグ過去映像集~ 1. 人面瘡 [新宿ヘッドパワー 1988] 2. 人間失格 [下北沢屋根裏 1989] 3. 陰獣 [下北沢屋根裏 1989] 4. アルンハイムの泉 [MZA有明 1989] 5. 夢女 [MZA有明 1989] 6. 猿面冠者 [博多DRUM Be-1 1989] 7. 盗人讃歌 [渋谷エッグマン 1991/12] 8. 独裁者最後の夢 [大宮フリークス 1992] 9. どだればち [弘前スペースデネガ 1995/11/22] 10. 三十歳 [弘前スペースデネガ 1995/11/22] 11. 無限の住人 [新宿日清パワーステーション 1996/10/08] 12. 辻斬り小唄無宿編 [弘前文化センター 1996/10/10] 13. エキサイト [新宿日清パワーステーション 1998/04/05] 14. 人間椅子倶楽部 [渋谷ON AIR WEST 1999/07/24] 15. 神経症 I Love You [渋谷ON AIR WEST 1999/07/24] 16. 埋葬蟲の唄 [渋谷ON AIR WEST 1999/07/25] 17. ロックンロール特急 [新宿ロフト 2007/07/19] 18. 猿の船団 [仙台マカナ 2007/09/07] 19. 肥満天使 [名古屋ell.SIZE 2008/03/07] 20. 夜が哭く [原宿アストロホール 2008/12/19] 21. 黒百合日記 [渋谷タワーレコード 2013/09/03] ※DVDはDISC1 / DISC2にて収録。 ※Blu-rayは2層1枚。
Rolling Stone Japan 編集部