具体性欠く政府の財政健全化目標 裏金問題のあおりで議論深まらず
2025~30年度の財政再建方針を示す政府の「経済・財政新生計画」が固まった。21日にも閣議決定される見通しだが、肝心の数値目標はないままで、具体性を欠く内容になった。背景には、岸田文雄政権と自民党の支持率低迷がある。 【写真】財政健全化目標は先送りが繰り返されてきた 17日、自民党本部であった政調全体会議。テーマは今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、政府が原案を示してから2度目の議論だった。冒頭をのぞいて非公開で、40人を超える議員が発言した。 「内容が一本化されていない」「6年間も縛るのは長すぎる」……。関係者によると、今回の骨太の原案に盛りこまれた「新生計画」に批判も出た。だが内容の具体化や抜本的な見直しに向けた議論には至らず、渡海紀三朗政調会長に対応を一任し、原案は大筋で了承された。一部の表現を修正したうえで、21日にも閣議決定される見通しだ。 政府が「新生計画」の内容を明らかにしたのは今月11日。国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字化させる今の目標を堅持して「進捗(しんちょく)・成果を後戻りさせない」と記したが、数値目標は設けなかった。「経済あっての財政」「経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」との記載もあり、PBの赤字を容認しているようにも読める。 骨太の方針は、予算編成の土台になる。今年の焦点は、財政再建の新たな目標をどう盛りこむかだった。日本銀行は3月に「異次元の金融緩和」を終了。金利がいずれ上がり、国・地方の借金が利払い費でふくらむおそれが強まったためだ。 だが、自民党の政調全体会議での2度にわたる議論の中心は、財政問題にはならなかった。複数の関係者によると、計4時間超に及んだ会議で議員から相次いだのは、予算獲得をにらんだ「陳情」だった。議員たちは、整備新幹線の着工や温泉文化の振興などを訴え、原案に反映するよう求めた。
朝日新聞社