寺山修司の言葉の群れが飛び交う『三上博史 歌劇』が1月9日開幕。「そのワンワードでも、ワンセンテンスでも持ち帰ってもらえれば」
寺山修司没後40年記念公演を紀伊國屋ホールで上演
三上博史が約8年ぶりに舞台に立つ「寺山修司没後40年記念公演/紀伊國屋ホール開場60周年記念公演『三上博史 歌劇 ―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―』」の公開ゲネプロが1月8日、東京・新宿の紀伊國屋ホールで開催された。同作は9日から14日まで同所で上演される。 寺山修司の世界を歌い、そして演じる三上博史 三上は高校1年生の時に寺山が監督を務めたフランス映画『草迷宮』のオーディションに合格し俳優デビュー。寺山との運命の出会いから数年後、紀伊國屋ホールで上演された天井桟敷の最終公演『レミング-壁抜け男』を会場でリアルタイムで観劇。寺山との出会いが俳優として生きる道を決定づけ、以来、本人が時に“呪縛”とさえ表現するほどの絶大な影響を受けてきた。 寺山によって“俳優”であり“表現者”という命を吹き込まれた三上は、そんな特別な存在である寺山の作品を自らの声と肉体を通して後世にまで語り継いでゆくことを使命とし、2008年から現在に至るまで毎年欠かさず5月4日の命日に、寺山の出身地である青森県三沢市の寺山修司記念館において追悼ライブを行っている。
そしてこの度、三上にとっては聖地のような劇場である紀伊國屋ホールで、演出J・A・シーザー、上演台本・高田惠篤、寺山偏陸という生前の寺山と共に幾多の名作を生んできた盟友たちとともに『三上博史 歌劇』を作り出すこととなった。 作品では「ふしあわせという名の猫」といった寺山作詞の歌を横山英規(Bass)、エミ・エレオノーラ(Piano)、近田潔人(Guitar)、ASA-CHANG(Drums)といった一流ミュージシャンの生演奏をバックに三上が歌唱し、「百年の孤独」といった寺山の詩を朗読。そして「演劇実験室◉万有引力」とのアンサンブルによる演劇シーンでは『レミング-壁抜け男』の影山影子役をはじめ、三上が早替わりで寺山作品の多種多様な登場人物を演じ分けている。 開幕にあたり三上は「どのようなものをやろうか?と机上で思い巡らせていた時を経て、構成が整い。肉体を通して稽古をし、そしていよいよ幕が開きます。みなさんがどんな反応をされるのか? とても恐ろしいですが、好きなようにやらせていただいているだけなので、どんな反応も受け入れるだけですね(笑)」、そして公演の見所については「今回の舞台は、肌感を大事にしています。温度のないものはできるだけ外しました。そこにあるのは、肉体、肉声、生音、匂い……生々しいものだけです。それは、寺山さんの言葉の数々が、みなさんに届き、巣食い、居座りやすいようにと、考えた結果です」とコメント。
作品を通して改めて感じた寺山の魅力については「その魅力はあまりにも多岐にわたっていて、それぞれが絶妙に絡み合っているので、とてもそれを再現することはできませんが、ボクなりのアプローチで、その入り口くらいには、みなさんをお連れすることができたら、と願っています」などと語っている。 また本作はチケットが完売。アーカイブ配信が2月3日~3月10日に行われることになったのだが、会場で、そしてアーカイブ配信で作品を見る観客には「寺山さんの言葉の群れが飛び交います。そのワンワードでも、ワンセンテンスでも持ち帰ってもらえましたら、シアワセです」とのメッセージを贈っている。