“就職祝い金”の禁止対象拡大検討 「それよりも大丈夫?」知人・友人紹介する“リファラル採用”が違法になるケースも
ある調査では企業のリファラル採用実施割合は75%という結果も
プロフェッショナルバンク(東京都千代田区)が2023年12月に同社クライアント企業(有効回答数:259人)に実施したアンケート調査によると、リファラル採用を実施したことがある企業は75%。同採用を促進する取り組みとして最も多かったのは、「社員へのインセンティブ提供」で、61%におよんだ。 特に急成長中のベンチャー企業では多くが採用し、社員への見返りとして”紹介料”を支給している。企業にとっては、高確率で優秀かつ企業文化にマッチした人材を採用でき、紹介した社員は”臨時収入”がもらえるウィンウィンの仕組み。だが、やり方を間違えると違法になることはあまり知られていない。
リファラル採用が違法になるケース
どんなケースだと「違法」となるのか。人材紹介した社員に対し、会社がその見返りとして金銭等を支払うだけでは違法にならない。ただし、「企業に人を紹介して得た報酬」として社員に金銭等を支払うと、違法になる可能性が出てくる。 詳しく説明しよう。職業安定法第30条には「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」と規定されている。つまり、社員が「業」として会社に人材紹介する場合は、厚労省の許可が必要となる。 リファラル採用の趣旨は、あくまでも知人や友人を紹介してもらうことであり、社員に「業」としての人材紹介を求めるものではない。そもそも、社員は、所属会社での仕事が本業だ。それでも、法にのっとれば、人材紹介に対する報酬の支払い方によっては違法になり得るということだ。 職業安定法第40条では、「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事する者または募集受託者に対し、報酬を与えてはならない」とあり、より具体的に企業の従業員への人材紹介に対する報酬の支払いを禁じている。 もちろん実際に多くの企業で取り入れられているように、リファラル採用が違法ということではない。そのよりどころとなっているのが、職安法第40条に「ただし」として、記載されている次の文言だ。 「賃金・給料またはこれらに準じるものを支払う場合、または報酬の額について事前に厚生労働大臣の認可を得ている場合を除く」。つまり、人材紹介をした社員に対し、その対価を賃金や給料として支払うのであれば、「セーフ」というわけだ。 そのためリファラル採用を取り入れる企業は、例えばその対価を「紹介手当」とし、ひとりにつき〇万円支払う等を就業規則に記載する必要がある。報酬は「業」としてではないため、金額は一般的には10万円~30万円が相場とされている。
違法なリファラル採用をした場合の罪は?
実際にリファラル採用制度で知人や友人等を会社に紹介し、採用報酬を手にした人なら給与明細で”臨時収入”による給与の増額を目にしたことがあるかもしれない。ちなみに、万一、職安法の定める条件をクリアせず、「報酬」が支払われていれば違法であり、職安法第65条の規定により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。 心配なら、改めて人事部に確認するなり、就業規則等をチェックしてみるといいだろう。
弁護士JP編集部