日銀がマイナス金利政策解除で17年ぶりの利上げ
「金利政策」の正常化から「バランスシート政策」の本格的な正常化に
ETF、J-REITの買い入れ策の正常化の本丸は、今回決定した新規の買い入れを停止することではなく、それを日本銀行のバランスシートから外していくことである。国債保有残高の削減、つまりQTとともに、そうしたバランスシート政策の本格的な正常化には、日本銀行はしばらく手を付けないだろう。 日本銀行は、当面のところは「金利政策」の正常化に注力し、「バランスシート政策」の本格的な正常化に着手するのは、2025年後半以降になると見ておきたい。 そこで次の焦点となるのは、日本銀行が政策金利の追加引き上げにいつ踏み切るかであるが、その時期は2025年前半までずれ込むと見ておきたい。2024年後半に見込まれる米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ、インフレ率の低下、内外景気の軟化などが、追加利上げの障害となるだろう。 日本銀行は、当座預金制度の見直しを行ったうえで、2025年前半に政策金利を0~+0.1%から+0.2%~+0.3%まで引き上げると見ておきたい。 そこが当面のピーク、つまりターミナルレート(金利の到着点)と考えるが、仮にさらに追加利上げがされるとしても+0.4%~+0.5%までだろう。
ETFのオフバランス化が正常化の仕上げに
その後、2025年後半以降の日本銀行の政策修正の対象は、「金利政策」から「バランスシート政策」へ、「金利」から「量」へと移っていくと考えられる。日本銀行はオーバーシュート型コミットメントを撤廃したうえで、長期国債の保有額を減らす、いわゆるQTを始めるだろう。それは、2025年後半と見ておきたい。 国債を市場で売却するのではなく、償還分の半分程度を再投資することで、緩やかに国債保有残高を削減していく。その際、国債の残高削減額を新たに目標として掲げ、経済情勢などに合わせてそのペースを微調整していくことになるのではないか。 そして最後に着手するのが、ETF(及びJ-REIT)のオフバランス化だ。株式時価総額に占める日本銀行が保有するETF相当分の割合は、50%を超える日本銀行の国債保有比率と比べればかなり小さく、市場機能を損ねるリスクは相対的に小さいと考えられる。 そのため日本銀行は、バランスシート政策のうち、最初に国債保有残高の削減に着手し、その後に、ETFを外部の受け皿機関に移すなどのオフバランス化に踏み切ると見ておきたい。その時期は2026年と予想する。 ただし、株価が大幅に下落すれば、日本銀行はETFの正常化を前倒しする可能性がでてくる。日経平均株価が2万円を下回れば、保有ETFに含み損が発生し、1万円台前半まで下がれば、含み損に対応した引き当てによって日本銀行が債務超過に陥るためだ。 ETFの正常化が進む頃には、植田総裁の任期も終盤を迎えることになる。こうして、異例の金融緩和策の副作用を軽減することを目指した正常化という歴史的な使命を、植田総裁は果たしていくことになるだろう。