「ジャーナリストが戦場に行くから国民は知ることができる」シンポで議論
戦争と報道について考えるシンポジウム「日本人拘束事件とジャーナリズムに問われたもの」が18日夜、都内で開かれ、戦場取材経験のあるジャーナリストらが紛争地で取材して伝えることの意義について議論した。 【アーカイブ動画】シンポジウム「日本人拘束事件とジャーナリズムに問われたもの」 このシンポジウムは、アジアプレス、JVJA、新聞労連、「創」編集部が主催。第1部と第2部の二部構成で、第1部「戦場取材をめぐる現実」には、ジャーナリストで映画監督の綿井健陽氏、フォトジャーナリストの豊田直巳氏、フリージャーナリストの安田純平氏、TVジャーナリストの金平茂紀氏らが参加。第2部「戦争とジャーナリズム」には、アジアプレス代表の野中章弘氏、作家で映画監督の森達也氏、ジャーナリストの堀潤氏、新聞労連委員長の新崎盛吾氏らが参加し、総合司会は月刊「創」編集長の篠田博之氏が務めた。
民主主義の根幹を支える
なぜジャーナリストが危険を犯して紛争地で取材するかについて、豊田氏は「現場に行かないと分からないことがたくさんある」と説明。誰かが現場に行って伝えないと、「隠されることもいっぱいある」として、「危険かどうか、国の判断とは別に、行かなければならない時もある」と戦場取材の意義を語った。 安田氏は、朝日新聞のシリア入りが批判されたことについて、「朝日が入ったのはクルド人が『イスラム国』から解放した街。プレスツアーで入った。そこでどうやって人質になるのか」と指摘。どう危険なのかについての具体的な説明は政府からもないとして、「“空気を読め”というのが一番危険。自分の頭で何が起きているか判断することが大事で、そのための情報を出すのが我々(ジャーナリスト)の使命。いまは政府をそのまま信じなさいと言っている。それは危険な方向」と述べた。 日本人拘束事件について、金平氏は「今までの国の形が変わろうとしている節目。国家が国民の生命財産を本気で守ろうとしたのか。真剣に考えなくてはならない岐路だ」との見方を示した。野中氏は、自己責任論が出ていることに対し、「政府に迷惑をかけるという概念は人権法にはない。自国民の安全を守るのは政府の義務」と指摘。米国や英国では「政府に迷惑をかけるという発想がない」と海外の事例を紹介し、「ジャーナリストがそこに行くから知ることができる。民主主義の根幹を支えるために必要なこと、と考えられている」と意義を語った。