前哨戦でフリー惨敗の羽生結弦は平昌五輪連覇に向けて不安はあるのか?
羽生結弦(22、ANA)の平昌五輪シーズンの幕開けは波乱に満ちたものだった。カナダのオータムクラシックを今季の前哨戦に選んだ羽生は、ショート、フリー共に歴代世界得点をたたき出した2シーズン前のショパンの「バラード第1番」、陰陽師「SEIMEI」に戻して挑み、そのショートではいきなり自身の持つ世最高得点を更新する112.72点をマークした。 ショートでは、右膝を痛めていたため、難易度の高い4回転ループを封印して4回転サルコーに変え、基礎点が1.1倍になる後半に4回転トゥループ+3回転トゥループを入れ、しかも、3回転トゥループでは両手を挙げる難易度の高い進化まで見せた。 だが、注目のフリーでは一変。8つのジャンプのうち6つに失敗して、本人が「いろんなことを考えてぐじゃぐじゃになった」と反省するほどの演技内容で、自己ベストから67.68点も下回る155.52点に終わり、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)に抜かれ2位となった。 金メダルを獲得したソチ五輪以降、羽生のフリー150点台は、公式練習中に衝突して大怪我をした2014年以来。なぜ、このような天国と地獄のような結果になってしまったのだろうか。連覇を狙う平昌五輪への不安はないのだろうか。 元全日本2位で、現在後進指導を行っている中庭健介氏はフリー失敗の原因をこう分析している。 「フリーが乱れました。4回転トゥループジャンプが決まらなかったのは、右足のバックアウトエッジのすべりが悪かったからです。右ひざの不安が影響したのでしょう。またジャンプのための足りなさやひねり戻しのタイミングのずれがいつもとは違っていました。 フリーの長い演技時間の中で、右ひざに負担をかけないようにすべると、左足への負担が増します。フォワードエッジをカーブから加速させていくのが羽生選手の長所でもありますが、この日のトリプルアクセルは、左足のいつもの加速が見られず踏み込みが甘く転倒する結果になりました。試合になると緊張感と興奮で多少痛みは感じなくなくなるものですが、右膝の不安が大きく影響したように思えました。何かアクデントがあれば、とっさに演技構成を変える適応力の高さも羽生選手は持ち合わせていますが、今回は集中力を欠きました」 右膝への負担を考えてプログラムの難易度を下げたが、まずは冒頭の3回転ルッツがパンクして1回転に。焦った羽生は、急遽、4回転ループを飛ぼうと考えるが、迷ったあげくに3回転ループとなった。本来のプラグラムでは4回転が5、6本の構成に思えましたが、この日は足の状態を考慮し数を減らしていました。それらを後半に集めた。4回転サルコー+3回転トゥループは降りたが、続く4回トゥループから始まる予定だったジャンプは2回転のトゥループ、続いての3連続のコンビネーションではそれが、2回転トゥループ+1回転ループ+2回転サルコーに終わり、続く得意のトリプルアクセルで転倒した。最後のジャンプとなる4回転トゥループは、両足着氷となり回転不足の判定を受けた。 それでも中庭氏はショートの世界最高得点に光を見たという。