FPが考える「新NISAをおすすめできない人」3選とその理由 特に後期高齢者の「NISA始めたい」には要注意
2024年1月に新制度がスタートしてだいぶ利用しやすくなったNISA(少額投資非課税制度)は、多くの日本人の資産形成におすすめです。 後期高齢者の「NISA始めたい」には親族会議を開いて慎重な検討を しかし、NISAは万人に適した資産形成方法ではなく、そこがNISAの落とし穴になっています。 この記事では、FPの私がNISAをおすすめできない人とその理由をお伝えします。 家計が赤字の人 家計が赤字の人は、運用できる資産が非常に少ない場合が多いです。 なかには負債を抱えている人もいるしょう。 その状態でNISAによる資産運用は困難です。 まずは支出を見直して家計の立て直しを図り、少しずつでも元本が保証される預貯金による資産形成を行うのが先決です。 マネーリテラシー(お金に関する知識や正しい判断をする力)が低い人 マネーリテラシーが低い人にもNISAをおすすめできません。 たとえばこんな人が該当します。 支出が収入を超える月が多い クレジットカードの延滞が多い リボ払いやカードローンを頻繁に利用している お金を借りた人や金融会社にお金を返さない 金融商品に関する知識が乏しい 元本より資産が減ることが許容できない 短期運用で高い利益を出そうとする 証券相場の動きに一喜一憂しがち 1~4に該当する人の多くは家計が赤字でしょう。 その場合はまず赤字の解消や元本保証の預金で資産を作ることが最優先です。 一方、5~8に該当する人は資産があってもNISAをおすすめできません。 投資の知識がないために、現在の資産を減らす恐れがあるからです。 そもそも、 NISAは元本割れ(投資商品の購入時より資産額が減ること)のリスクがゼロではない証券取引 です。 運用の失敗や証券相場の動きによっては、大きな損失を被るリスクもあります。 また、NISAは運用期間が長いほど高い利益が期待できる反面、短期運用ではたいした利益が期待できません。 マネーリテラシーが低い人はそのことを理解していないので、少し株価が下ると動揺してすぐ売却する傾向があります。 また、「短期運用で利益が出ない」と言っては売却と購入を繰り返し、なかなか利益を出せない人も多いのです。(現役銀行員情報) そのような傾向がみられる5~8の人は、まず投資の勉強をしてからNISAを始めましょう。 後期高齢者 実は後期高齢者にもNISAがおすすめできない場合があります。 その理由は以下の通りです。 NISAは後期高齢者にとってメリットが小さい 分散・積立・長期運用による福利効果が大きいNISAは、余命が長い若年世代ほど資産形成におけるメリットが大きくなります。 一方、後期高齢者は余命や運用期間も短い分、そのメリットが小さくなってしまいます。 ただ、すでにNISAである程度まとまった資産を形成している人は、運用実績に応じた利益が出ているでしょう。 その場合は、「自分で正常に資産を管理・運用できるうち」はNISAを続けてもいいでしょう。 後期高齢者には投資の知識や経験が乏しい人が多い 長年預金で資産形成してきた後期高齢者には、投資の知識や経験が乏しい人が多いです。 そのことを背景として、多くの後期高齢者には次の傾向が見られます。 元本が減ることに強い抵抗がある 証券相場の動きに一喜一憂しがち 株価が下がると不安になってすぐ売却する また、あくまで私の体感としてですが、以下の傾向もあると感じます。 周囲のアドバイスを聞かない 自分で投資の勉強をしない そのような人がNISAを始めても、思うように利益が出ない可能性が高いでしょう。 また、運用の失敗を周囲のせいにする(「〇〇がすすめたから」など)傾向もよく見られます。 そのことから、私は本人のためにも周囲のためにも、後期高齢者が今からNISAを始めることはおすすめしていません。 後期高齢者のNISA口座はいつ凍結されてもおかしくない 後期高齢者の家族親族も巻き込む、NISAのデメリットも挙げます。 口座名義人が死亡したり認知症になったりすると、銀行や証券会社の口座が凍結されます。 NISA口座も例外ではありません。 NISA口座が凍結されると、家族親族はその後の手続き(NISA口座の解約や移管など)が大変です。 認知症による口座凍結だと法定代理人を立てる必要が生じるなど、さらに大変になるケースも多いでしょう。 また、口座名義人が亡くなるとNISA口座の資産はすべて相続財産となり、相続人の特定口座に移管されます。 その際に、生前の運用で生じた利益は相続した時点で額課税対象となる点にも注意が必要です。 それを考えると、家族親族にとっては後期高齢者が新たにNISAを始めることのデメリットが大きいでしょう。 したがって、後期高齢者が「NISAを始めたい」と言ったら親族会議を開き、本人の意思を尊重しながら口座開設の是非について慎重に話し合うことが必要です。 後期高齢者になったらNISAを含む証券取引全般から手を引くことを検討したい すでにNISAなどの証券取引を長く行っている場合も、後期高齢者になったら証券取引全般から手を引くタイミングを検討したいところです。 その理由は健康寿命にあります。 厚生労働省のe-netによれば、令和元年時点の健康寿命は 男性が72.68歳、 女性が75.38歳です。 この結果は、健康寿命を超えた人の多くがなんらかの健康問題を抱えていることになります。 若い世代でも健康に問題が生じると物事の正しい判断が難しくなりますが、健康寿命を超えた後期高齢者はそれが顕著になります。(私自身も親を見てそれを強く感じています。) NISAなどの証券取引は、投資商品の選定や運用方法、売却のタイミングなどを決める上で難しい判断を迫られることがあります。 そのような場面で、適切な判断ができなければ大損する恐れもあります。 そのため、まだ適切な判断ができるうちに証券取引から手を引く勇気も必要です。 なお、元本保証の個人向け国債(1万円から購入可)による資産運用はNISAより低リスクです。 現役銀行員の友人も、 「自分の親(後期高齢者)には個人向け国債をすすめた」 と言っていたのでおすすめできます。 国債について知りたい方にはこちらのページがおすすめです。 ただ、金融機関は国債購入の手続きに消極的なところが多いです。 中には窓口で「個人向け国債を始めたい」と言ったとたん、国債のデメリットを延々と並べる金融機関もあります。(私の実体験より) それがいやな人はオンラインで国債を買える金融機関を選ぶのがおすすめですが、オンラインで金融取引ができない後期高齢者も多いでしょう。 その場合は、 最近金利が上昇した「円定期預金での資産運用」がおすすめ です。 より金利が高い円定期預金を選べば、死ぬまで元本が保証された状態で運用でき、それなりに利息がつくでしょう。 NISAは万人におすすめできる資産形成ではない NISAは万人におすすめできる資産形成ではありません。 人によってはNISA以外の方法で資産を運用する方がよい場合や、NISAをやめた方がいい場合もあります。 そのため、まず現在の状況をふまえてNISAをやるかどうかを慎重に検討し、自分にとってメリットが大きくリスクが小さい選択をしたいところです。
manetatsu.com 大岩 楓