伝説のバンド「千年COMETS」が34年ぶり復活 介護福祉士になっていたボーカル高鍋千年さんの決意
「BOØWY」「ブルーハーツ」など人気バンドがひしめいた1980年代後半に彗星(すいせい)のごとく現れ、デビッド・ボウイを思わせる耽美な楽曲とファッションで魅了したロックバンドがいた。その伝説のバンド「千年COMETS(コメッツ)」が今夏、34年ぶりに復活する。ボーカルは福岡県在住の介護福祉士、高鍋千年(ちとし)さん(62)。今、なぜステージに戻る決意をしたのか-。 復活する「千年COMETS」のメンバーたち 高鍋さんは福岡県嘉麻市出身。ビートルズで音楽に目覚め、デビッド・ボウイに衝撃を受けた。グラムロックと呼ばれたスタイリッシュな音楽性とファッション。「男でも化粧していいんだ」と刺激を受けたという。 高卒後、福岡市内のナイトクラブで専属バンドのボーカルとして活動。24歳の時、レコード会社のオーディションを受けて注目され、87年にデビューした。高鍋さん作曲の高い音楽性が注目を集め、シングル4枚、アルバム3枚を出したが、ビジネス的な成功には至らなかった。わずか3年間の短い活動期間で解散。ソロ活動もアルバム1枚で終わった。 「ずるずるやっても仕方がない」。音楽の道はきっぱり諦め、東京で金属加工会社の社員として働いた。それから十数年。職位が上がるにつれて、違和感を覚えるようになる。 「人の上に立つ柄じゃない」。介護士をしていた知り合いのミュージシャンから「やりがいがあるし、需要もある」と聞いて興味が湧いた。介護福祉士の資格を取って転職。現場に立つと大変な仕事だった。 「優しい気持ちがないとできない」 慣れてくると、施設で昭和歌謡を歌って聞かせた。高齢の入所者たちは時に涙を流し聴いてくれた。「報われた気がした。一番盛り上がるのは『むすんでひらいて』だったけど」。 老後は福岡で暮らそうと昨年、古民家を購入した。「ラーメンも焼き鳥もうまいから」 その直後、バンドの元メンバーから連絡がきた。「もう一度、歌ってみないか」という誘いだった。解散以来、メンバーと会ったことはなく「もう会えずに死ぬかも」と思っていただけに出演を即決した。 今年3月、東京・原宿のライブハウス。「復活前夜祭」と銘打たれ、会場は予想を超える盛り上がりを見せた。「照れくささもあったけど、意外にやれた」。デビュー当時のプロデューサーの後押しで、7月の復活ライブが決まった。 「若い頃はいいかげんだった。介護で徳を積んで、プラマイゼロになってあの世に行きたい。そんな気持ちが歌で表現できたら」 ■千年COMETS 復活祭 7月12日午後6時半から、東京・渋谷の「duo MUSIC EXCHANGE」で。自由席5千円。立ち見3500円。チケットぴあで発売中。