S&P、ステーブルコイン評価システムを発表──USDTは低スコア
時価総額900億ドル、世界最大のステーブルコインであるテザー社のUSDTについて、S&Pグローバル・レーティングス(S&P Global Ratings)は、そのコア機能である1ドルの価値を保つという点でライバルよりも劣っていると評価した。 S&Pは債券と信用格付けの長い歴史で有名だが、新しくステーブルコインを評価するシステムを導入。ステーブルコインは、暗号資産(仮想通貨)と従来の金融システムのブリッジとして、暗号資産エコシステムで重要な役割を果たす。 米ドルやユーロのような伝統的な通貨の代用として機能し、法定通貨と連動している(USDTは1ドルとペッグされている。1ユーロとペッグされているものなどもある)。投資家が暗号資産を現金化する際、法定通貨ではなくステーブルコインの形で受け取ることができ、ステーブルコインはデジタル決済の一形態としても使用される。 S&Pによると、同社の新しい「Stablecoin Stability Assessmentt(ステーブルコイン安定性評価)」は「法定通貨と連動した安定した価値を維持する能力を評価」することを目的としており、ステーブルコインを1~5の5段階で評価する。スコアが1であれば、そのステーブルコインは「非常に強い」ことを意味し、5であれば「弱い」ことを意味する。 最も人気のテーブルコイン、USDTのスコアは4(「制約されている」という意味)だった。時価総額で2番目に大きいステーブルコイン、サークル(Circle)のUSDコイン(USDC、時価総額240億ドル)は、2(「強い」)を獲得した。これは評価対象となったステーブルコインの中で最高評価であり、ジェミナイドル(GUSD)とパックスドル(USDP)も同じ評価を受けた。
準備資産の質
S&Pはこのシステムを紹介する声明の中で、「ステーブルコインの裏付けとなる資産の質は、最終的な評価の重要な要素だ。規制と監督、ガバナンス、透明性、流動性と償還可能性、実績を含む他の分野での弱点が低評価の要因となった」と説明した。 伝統的金融(TradFi)大手によるこの評価が、投資判断の指針になるかどうかは未知数だ。規制の厳しいTradFi企業、つまりS&Pのような権威の意見に耳を傾けることに慣れている企業にとっては、USDCはUSDTよりも透明性の高い選択肢となる。USDCは準備資産の構成についてより多くの情報を提供し、準備資産に関する報告書をより頻繁に発表している。 一方、数多く存在するUSDTのユーザーは、USDTを裏付ける資産の質について何年も疑問視されているにもかかわらず、USDTを保有し続けることで、準備資産をめぐる透明性についてはあまり気にしていないという態度を依然として表明している。 900億ドルのUSDTが流通しているのであれば、テザー社には同価値の資産、できれば現金やそれに相当するような安全で安定した資産が蓄えられているはずだ。 テザー社は公式な監査を公表したことはないが、四半期ごとに保有資産に関する「保証報告書」を公表している。テザー社は、第3四半期末時点で860億ドルの資産(うち726億ドルは米国債で、世界で最も安全な投資と広く考えられている)で、830億ドル相当のUSDTを裏付けていると述べた。 テザー社とその姉妹会社ビットフィネックス(Bitfinex)が、ニューヨーク州と和解するために2021年に1850万ドルを支払うことに合意したことで懸念はさらに強まった。ニューヨーク州は申し立ての中で、「暗号資産は常に米ドルに完全に裏付けられているという主張は嘘だった」と主張していた。