櫻田朔(青森山田) 東北決勝のノーヒッターの武器は「圧倒的緩急」<2024年のヒーロー候補たち④>
【高校野球ドットコム注目選手ファイル】 秋季東北地区高校野球大会決勝で、青森山田の背番号10、櫻田 朔投手(2年)がノーヒットノーランの快投を演じた。150キロを超えるような剛速球があるわけではない。針の穴を通すような制球力があるわけではない。どちらかというと、体の線が細い櫻田が武器にしたのは「緩急」だった。 【動画】神宮大会準決勝を徹底解説! 最速は144キロというが、この決勝では130キロ台後半が中心だった。この直球に加え、100キロに満たないような大きなカーブがある。この緩急差で、強打の八戸学院光星打線を翻弄した。直球もカーブも腕をしっかり振っている。縦振りのフォームからの直球には角度がつき、カーブは落差を生む。カーブはほとんど高めに浮くことがなく、低めへと制球されていた。この点も打者を打ち取れる要素となっていた。 八戸学院光星の打者は自分のスイングができていなかった。直球には詰まり、カーブには泳がされる。力のないフライとゴロの繰り返しだった。初回と8回の右翼へのライナーがヒット性の当たりではあったが、そのほかはいわゆる凡打だった。緩急をつける投球で、ここまで抑えられることを証明した。 フォームの特徴としては、右足、とくに膝から下の粘りが強い。軸足をやや沈み込ませてテークバックにいき、リリース時には右足のプレートのケリも強く、直球に力が加わっている。腕の振りもいわゆるアーム式ではなく、テークバックは小さく、投げた後が大きい。リリースした後に右腕が左脇に当たるほど強く振り抜かれている。球の回転が上がるようなフォームで、将来性も高い。 明治神宮大会では救援で1回を投げて無失点に抑えたがチームは敗れた。全国の舞台で本領を発揮できなかった悔しさは、一冬越えたセンバツの舞台で晴らすことだろう。