電気自動車「割引戦争」で押されたテスラ、米シェア50%割り込むか
米国の電気自動車市場でテスラのシェアが下落傾向だ。「電気自動車=テスラ」の公式を作ったテスラのシェアが今年累積基準50%以下に下がるという見通しが出ている。競合メーカーが販売奨励金などで実質的に価格を引き下げているのにともなう影響だ。 自動車産業データ機関S&Pグローバルモビリティによると、テスラの米国シェアは1~4月に50.1%で前年同期の60.8%に比べ10ポイント以上落ちた。2022年の同じ期間にテスラのシェアが70%だったことを考慮すれば毎年10ポイントずつ落ちる傾向だ。テスラは4月の1カ月間のシェアでは46.3%とすでに競合メーカーに過半数を渡した状態だ。 テスラ不振の最大の理由は価格競争力だ。後発走者は販売奨励金を使って実質価格を低くしてきた。販売奨励金は自動車販売額の一定部分をディーラーにインセンティブとして提供する方式だ。1000万ウォンの車を売るディーラーに100万ウォンの成果給を与えると仮定すれば、ディーラーは販売額のうち100万ウォンを本人の裁量で調整し販売価格を低くできる。 ◇トヨタの奨励金、テスラの9倍 業界によると、フォードは「マスタング・マッハE」に対し、1台当たり9000ドルの奨励金を使っている。フォードの4月の販売台数5358台は1年前の1384台に比べ287%増えた。トヨタは「bZ4X」に1台当たり1万963ドルの奨励金を支給する方式で4月の販売台数が1年前の625台から4666台と647%増やした。現代自動車も7500ドル程度の奨励金を支給するという。 これに対しテスラが支給するインセンティブは1台当たり1392~1853ドルにとどまる。今年初めに1024~1104ドルだった奨励金を、競合メーカーを意識して引き上げたがこの程度だ。その上テスラの普及型セダン「モデル3」は中国製バッテリー部品を使ったという理由で今年初めから米政府の税額控除を受けられずにいる。テスラはバッテリー部品供給先を変えた後、先月中旬になり税金優遇審査を再び通過した状態だ。ただ今後回復する税金優遇最大7500ドルがそのまま販売価格下落に反映されるとしてもフォードやトヨタが提供する奨励金には至らない。 自動車業界では、電気自動車販売の増加が続くと考えた各メーカーがこれまでの超過生産分を処分するためにこうした販売戦略を使うだろうという見方も出ている。出血を伴う追撃という話だ。米中古車取引業者アイシーカードットコムのカール・ブロア選任アナリストは自動車専門メディアのオートモーティブニュースに「数年前に生産量競争をした電気自動車メーカーがいまは二日酔いの状況」と評価した。各メーカーが生産台数縮小と在庫整理ができるまでこうした出血性戦略が続くだろうという話だ。この分析の通りならばテスラのシェア下落は一時的かもしれない。 ◇米で2位の現代・起亜、「現地生産」で追撃 現代自動車と起亜はリース販売方式に注力し米国内で電気自動車シェアを2位の10%台まで上げた。リースは顧客の立場では長期レンタカーと類似した形の車両購入方式だが、現代自動車グループの立場ではリースで販売すれば「アイオニック」など米国外で生産した電気自動車も同じように1台当たり最大7500ドルの税額控除を受けられる。このため米議会など官界では現代自動車がインフレ抑制法税額控除非適用車両をリースで安く売りインフレ抑制法を回避しているとの指摘も出る。 これに対し現代自動車は10-12月期にジョージア州に完工する予定の新工場「現代自動車グループメタプラントアメリカ」(HMGMA)で電気自動車を生産し、規制迂回議論も解消する計画だ。現代自動車が現地生産をすればリース中心に攻略してきた米電気自動車市場を個人購入者領域でも拡大でき電気自動車販売競争をさらに拡大できる。