オランダでレギュラーを掴んだ佐野航大が誇示する“高度な戦術的能力”。本人は「全然満足できない」「感触は掴めなかった」と進化に貪欲【現地発】
ブロビーとの1対1には「もう壁ですね(笑)」
2月18日、NEC相手に苦戦を強いられたものの、アヤックスは79分にFWフォーブスのゴールで2−1と勝ち越した。ヨハン・クライフ・アレーナを埋めた5万人を超すアヤックスファンは勝利を確信する。その後、アヤックスの選手たちのプレーが緩んだのを、NECのMF佐野航大は感じていた。 【PHOTO】華やかなダンスパフォ! Jクラブチアが国立に大集合!(Part1) 「自分たちが諦めさえしなければ絶対に行ける」 そう思いながらプレーしていた後半アディショナルタイム4分だった。敵陣左サイドでスローインのボールを受けた佐野はスーパーサブのMFシラ・ソーに縦パス。その大外に飛び出したMFラッセ・ショーネがニアに低く鋭いクロスを入れると、FW小川航基が相手DFと交錯しながら潰れ、その裏にいたFWロベール・ゴンザレスが難なくシュートを蹴り込んだ。 こうしてNECは敵地のアヤックス戦を2−2の引き分けで終えた。 「2点目は(スローインのボールを受けたあと)自分が下げずにしっかり縦パスを入れて周りが連動し、航基くんがニアに入って潰れた。一人ひとりが良い役割を果たしました。(オフサイドか否かの)VARにはちょっと焦りましたが」 今季、公式戦でのゴールを二桁に乗せ、オランダメディアでも大きく取り上げられている小川は、ニアポストに飛び込んで同点ゴールに絡んだシーンを振り返って言った。 「結局今日はゴールを決められなかったですけど、何かチームに貢献したいって思いでした。少なからずゴールに貢献できたと思います」(小川) 一方、佐野は「そんなに感触を掴んだゲームではなかった」と自身のパフォーマンスに納得いかない様子だ。 「ところどころでビルドアップに参加しながら(マークを)外したりとか、それくらいはありましたけど、全然満足いく感じじゃないですね。自分としてはボールロストだったり、前向いたあとのプレーの選択の判断だったり、試合直後の意識として(反省ばかりが)あります」 アヤックスの選手たちは若い選手ばかり。右ウイングで先発した佐野のマークを務めたのは17歳のDFヨレル・ハトだった。 「(ハトは)前に、前に、と来るタイプのサイドバックじゃなかった。サイドにボールが入った時も足下に持ってはたいていた。自分としてはもう少しガチガチやりたかった。アヤックスはボールを持つのがうまく、個人戦術とチーム戦術で『いなされて、外されて』というのが多かったです。だから、相手も疲れている様子がないし、自分も『もうちょっと行きたいけれど行けない』という感じで、プレスにも行きましたがステイする場面が多かった。前の試合(RKC戦/0−2で負け)、オランダカップ準々決勝(ADOデン・ハーグ戦/3−0で勝利)のほうが全然キツかった」 アヤックスには「今、オランダリーグで最高のストライカー」と呼ばれているブライアン・ブロビーがいた。22歳にしてすでにフィジカルが完成に近づいている180センチのCFは、NEC戦でもDFを背負ってボールを受けてもビクともせず、1ゴール・1アシストとアヤックスでひとり気を吐いた。 佐野はそのブロビーに対して、後半は果敢に1対1を挑んだ。 「もう壁ですね(苦笑)。あれはちょっとびっくりしました。CBフィリップ(サンドラー)とか、強い選手があれだけ苦戦しているのを見て、 『一回(ブロビーと)やってみたい』と思っていたんですが、そういう時にもファウルでしか止められない。前半、アヤックスのスローインのシーンで、ブロビーに俺が付いたんですけれど、サイドチェンジをドカンって蹴られてしまった。身体の使い方も強さもちょっとエゲツなかったです」 佐野の話を聞いていると、NECのほうが優勢に試合を進めていたことに気づいていないようだったので、アヤックスのシュート8本に対し、NECが16本も撃ったことを告げると「本当ですか!?」と言って驚いていた。 佐野の口から突いて出てくるのは反省の弁ばかり。しかし、20歳の小兵MFは4-3-3の右ウイングとセントラルMF、3-2-1-4のセントラルMFとポジションやタスクを変えながらタフに90分+9分を戦い切った。特に1点ビハインドの終盤は、チームがリスクを負って反撃に出たなか、最終ラインでアヤックスのカウンターを防ぎ、左右に流れてボールの落ち着きどころを作り、最後は同点ゴールの起点になった。 「(ポジションを変えながら)対応していくっていうのは、自分の良さのひとつ。ユーティリティ性は武器なんです」 今年に入ってからレギュラーの座を掴み、7試合中6試合(カップ戦を含む)でフル出場と一気にチームの主力のひとりに就いた佐野。その戦術的能力の高さが垣間見えたアヤックス戦だった。 取材・文●中田 徹
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