脱石油依存目指すサウジ、日本企業の進出先に定着するか 「国民性」に商機
【リヤド=根本和哉】サウジアラビアの首都リヤドで29日、国際会議「未来投資イニシアチブ」が開幕した。31日までの3日間、世界各国の首脳や経営者が人工知能(AI)や次世代エネルギー、環境問題について議論する。サウジは石油に依存する経済からの脱却を目指し、海外からの投資を呼び込んでおり、日本企業の中国や東南アジアに次ぐ投資先として注目度が高まっていきそうだ。 「来年は国交樹立から70周年を迎える。私たちはサウジアラビアのベストパートナーとして、豊かな未来を創るために大きく貢献することを約束する」 みずほ銀行の加藤勝彦頭取は29日の講演で、サウジへの投資強化を宣言した。水素分野への投資や、日本のスタートアップ(新興企業)をサウジに紹介する活動を展開すると述べ、今後リヤドに地域拠点を設ける計画も発表した。 ■産業多角化図るサウジ この日の会議には、ほかにも複数の日本企業のトップや現地担当者が参加した。こうした動きには、サウジが産業の多角化を目指し、海外企業に積極的に投資を働きかけているという背景がある。 世界最大級の産油国であるサウジは、財政収入の多くを石油に頼る。ただ、他地域での石油増産や世界的な脱炭素化の流れによって石油価格が下落するリスクが強まり、同国政府は石油依存からの脱却を志向。2016年に経済改革構想「ビジョン2030」を発表し、国内総生産(GDP)に占める海外直接投資の割合を16年の3・8%から30年には5・7%に引き上げる目標を掲げた。 特に注力するのは、水素などの次世代エネルギー事業、インフラ関連事業などだ。現地生産や現地調達に対する優遇措置を講じるなどして投資を呼び込んできた。国際通貨基金(IMF)は、25年のサウジの実質経済成長率を4・6%と予測。これは20カ国・地域(G20)の中で4番目に高い水準だ。 ■日本のスタートアップにもチャンス 企業の海外投資を巡っては、ウクライナ危機や米中対立の深刻化により、これまで重視してきた中国への新規投資に慎重にならざるを得ないという事情もある。新たな投資先として有望視されるのがサウジだ。 日本貿易振興機構(ジェトロ)の秋山士郎リヤド事務所長は「サウジには一番良いものを好む国民性がある。高い技術を持っていれば、日本のスタートアップにもチャンスがある」と指摘する。