大沢たかお「このために6年王騎を演じてきた」 『キングダム』最終章は忘れられないエピソード
これまでも大沢は王騎を演じることについて、事前に芝居を固めず、撮影現場でも常に試行錯誤してきたというが、それは1作目から高めてきた感情をようやく発揮できた今作でも変わらなかったようだ。
「これだけ長く演じてきた役ですから、馴染ませて自然に演じることも芝居の選択肢としてはあるのでしょうが、それだと見てくれた方に大事なものが届かない。特に王騎は、僕が頭の中の計算だけでやったような芝居では難しい。想像がつかない“バケモノ”のような王騎将軍を演じるには、毎シーン、毎カット、計算からわざとはみ出していくような表現にチャレンジして、ある種、自分も“バケモノ”にならないといけない。だから、毎日の撮影が終わると『困ったなあ、王騎将軍こっちへ行っちゃったかあ』『明日の撮影どうしよう』みたいになる(笑)。でもその連続が、“バケモノ”を作りだし、山崎君をはじめ共演者の皆さんも何が飛び出してくるかわからない王騎の芝居にリアクションしてくれた。そういう連鎖が作品自体を見たことのないすごいものにしていくことにもなると思ったんです」
前作『キングダム 運命の炎』公開時の大ヒット御礼舞台挨拶で主演の山崎と大沢が登壇した際、大沢からねぎらいの声をかけられた山崎が感極まり涙したエピソードが話題を呼んだが、大沢はこの時の思いをこう振り返る。
「『キングダム』の実写化が発表された頃は賛成の声が少なかった。特に漫画の実写化作品の主演も多い山崎君には、作品の成否の責任を背負わせるような理不尽な声も多かったし、辛かったと思うんですね。彼をこの作品で成功させるのも助演の僕の仕事だと思ったし、彼の過去の作品も全部観て、どうしたら今までの山崎君とは違うような表情を引き出せるのかなとも考えた。それで王騎と信のような距離感でいることを意識していたんだけど、彼にとっては冷たく思えたかもしれない。でも僕は最終的に彼が勝てばいいと思った。そういう考えで距離をとって接していたこともあるので悪かったなとは思ったけど、『キングダム』という超大作を引っ張る絶対的主役として成長した立派な彼の姿を見て、さまざまなことを乗り越えて素晴らしい俳優になったという、それまで言ったことのない言葉をかけました」