東京五輪のメダリスト伊藤美誠がパリ五輪の代表から落選（写真：YUTAKA/アフロスポーツ）

日本卓球協会は5日、今夏のパリ五輪代表候補予定選手を発表し、女子団体戦のメンバーに張本美和（15、木下グループ）を選出、3大会連続の出場を目指した東京五輪メダリストの伊藤美誠（23、スターツ）が外れた。日本の最大のライバルである中国のメディアは、実績のある伊藤の落選を驚き、シングルスでの出場が内定していた早田ひな（23、日本生命）と平野美宇（23、木下グループ）に中国の強豪を破ったことのある張本を加えた日本の陣容を「金メダルを獲りにきている」と警戒した。 【画像】「ポロンあるかも」井岡一翔の大晦日決戦を盛り上げた4人のラウンドガール

「パリで勝てる選手として張本を選出した」

　パリ五輪に臨む卓球女子代表の団体戦メンバーが決まった。注目を集めていた団体戦メンバーとして選出されたのは、実績十分の伊藤ではなく15歳の張本だった。 　約2年間にわたって繰り広げられてきた、シングルスの2枠を争う過酷な選考レース。すでに内定を勝ち取った早田と平野にポイントで続いていたのが、2大会連続で五輪に出場し、東京五輪では女子シングルスで銅、女子団体で銀、新設された混合ダブルスでは水谷隼(34)とのペアで日本卓球界史上初の金メダルを獲得した伊藤だった。 　最新の世界ランキングでも、伊藤は5位の早田に次ぐ日本人2番手の10位と張本の16位を上回っている。ただ、伊藤は最後の選考会となった1月下旬の全日本卓球選手権大会で6回戦敗退を喫し、シングルス代表入りを逃した後にこんな言葉を残していた。 「ずっとパリ五輪のシングルス優勝を目指してきたので、選出されても（団体戦に）出場するかどうかは、はっきりと決めていません」 　この発言が選考に与えた影響については女子代表の渡辺武弘監督はキッパリと否定。その上で、選考の経緯をこう説明した。 「昨年1年間の国際大会の戦いぶりや上位選手との成績を総合的に見ながら、今回は張本選手が一番ふさわしいと思った。五輪での金メダルは悲願。中国を倒して金メダルを取りたいという気持ちもすごく強い。国内選考の順番も大事だが、海外で勝てる、パリで勝てる選手として張本選手を選出した」 　対中国を意識しての選考だったという。 　「大魔王」と呼ばれ、その強さから警戒されるとともに、リスペクトされる存在でもあった伊藤の落選は、中国のメディアやファンからは驚きを持って受け止められた。中国メディアの『捜狐体育』は「本当に残念だが、来たるパリ五輪で伊藤と孫穎莎の戦いは見られない」と伊藤の落選を伝えた。 「2大会連続で五輪に出場し、日本卓球界で唯一の現役金メダリストである伊藤をあきらめ、15歳の張本を選んだ理由は何だったのか。女子代表の渡辺武弘監督の言葉を借りれば『伊藤は傑出した選手であり、選考は非常に悩んだが、昨年の戦いぶりから張本を選んだ』となる。つまり伊藤を選出するには、東京五輪以降に精神力や推進力だけでなく、ここ一番で見せた冷酷さまでが弱まっていた。そこが物足りなかった」 　同メディアはさらに張本の潜在能力を要警戒としている。 「張本には昨年の大会で、女子ダブルスや混合ダブルスで孫穎莎ペアを破った実績がある。時として非常に大きなインパクトを残してきた彼女はまだ15歳で、大きな伸びしろを残している。日本が張本を3人目の代表に選出した最大のポイントは、そのワンダープレイヤーぶりに賭け、団体戦で中国を倒して金メダルを獲りにきているからだ」