殉教者か臆病者か…死亡したシンワル氏を見つめる2つの視線
16日(現地時間)に死亡したパレスチナのイスラム武装組織ハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル氏に対する相反する評価が対立している。イランとパレスチナでは彼を殉教者または英雄として、イスラエルは彼を不道徳な指導者であり臆病者として記録しようと考えている。シンワル氏の除去で「ハマス清算」を達成しようとしていたイスラエルだが、アラブ圏でシンワル氏に対する追慕熱が過熱したり長く続いたりする場合、イスラエルとしては大きな負担にならざるをえない。 ウォール・ストリート・ジャーナルは20日、パレスチナ人の間でシンワル氏について再評価がなされており、シンワル氏の冥福を祈る葬儀の祈祷が行われたとして、シンワル氏の死がサウジアラビアやヨルダン、エジプトとともに米国と同盟関係にあるアラブ諸国の動揺を引き起こす可能性があると評した。中東問題委員会のビバリー・ミルトン・エドワーズ首席研究員はワシントン・ポストに「シンワル氏のイメージがより多くの新兵募集や抵抗などにつながる可能性がある」と指摘した。 一方、イスラエル国防軍(IDF)は、シンワル氏が昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲した「アルアクサの洪水」作戦の数時間後に、家族全員と一緒にトンネルを利用して荷物を運ぶ監視カメラの映像を公開し、シンワル氏を不道徳な指導者として描写した。 イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、映像メッセージを通じて、「シンワル氏は、ベッド、枕、食料、水、テレビなど家族と荷物をハマスのトンネルを利用して移動させた。シンワルは常にガザ住民よりも、自分、金、そしてテロリストを優先した。これはガザの住民たちにはない贅沢だった」と述べた。 イスラエル軍のアビハイ・アドライ・アラビア語報道官はフェイスブックに、シンワル氏の夫人が持っていた黒色のバッグの動画キャプチャー写真を投稿し、「(夫人が)3万2000ドル(約480万円)相当のエルメスのバーキン・バッグを持っていた」とも主張した。 イスラエル政策フォーラムのシラ・エフロン首席理事はCNNに、イスラエルが今回の映像を公開した理由は、イスラエルが世論の方向を修正しようとする意図があったからだと解釈した。しかし、エフロン理事は「(死亡当時)シンワル氏は(イスラエルが主張していたのとは違い)トンネルにはおらず、人質を前面に出すこともなかった。これは、イスラエルの意図ではない」として、「(ドローンに棒を投げるシンワル氏の最後の映像の)後で公開した(トンネル避難の)映像は、イスラエルが好む話を強化しようとする試み」だと分析した。 これに先立ち、イスラエル軍が公開したシンワル氏の最期の映像には、シンワル氏がガザ地区最南端のラファのタル・アル・スルタン地区のある建物の内部で、手に銃創を負ったまま座っていて、自分を発見して攻撃するために宙に浮いているドローンに向けて、地面に落ちていた棒を必死に投げて抵抗する様子が映っていた。これについて、ハマスとイランは「犠牲」「闘士」「殉教」などの単語を使ったことがある。 その後、ハマスの最高政治指導者ハリル・ハイヤ氏は18日、シンワル氏の死亡を公式に確認するテレビ演説を通じて、「私たちの解放のために自分の人生を犠牲にした。一生を偉大な闘士として生きた」とたたえ、ハマスと同盟関係にありイスラエルと対立しているイランの国連代表部は、SNSのXでシンワル氏の殉教(Martyr)を強調した。 チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )