全焼造船所 官民で再建 相馬唯一 漁業復興へ福島県が1.5億円 国、地元も支援 今年度復旧目指す
2月に全焼した福島県相馬市唯一の造船所「松川造船」の工場は官民連携で再建される。県は整備費として1億5千万円を補助する方針を固めた。県によると、火災に遭った水産施設の復旧に補助金を投じるのは初めて。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で落ち込んだ漁業復興のため、漁船の造船や修繕を担う施設は不可欠と判断した。造船所は国や近隣自治体からも支援を受ける見込みで、今年度内の復旧を目指す。周辺には他に修繕などを受け入れる施設がなく、地元漁業者は一日も早い再建を待ち望んでいる。 内堀雅雄知事は2日の定例記者会見で、関連費を盛り込んだ26億5500万円の2024(令和6)年度一般会計補正予算案を発表した。県によると、工場の整備費は概算で6億円程度で、船の修理などに必要な設備費を加えるとさらに膨らむ見込み。県は県漁業振興基金を通して造船所に補助する。補助額は整備費全体の4分の1程度。内堀知事は「沿岸漁業の本格操業再開に向けた漁船の造船・修繕体制に影響が生じている。できるだけ早く再生するように県としても力を尽くす」と説明した。
造船所は年間約60隻を整備してきた。2月の火災で工場や船などが燃えた。既に工場の解体と撤去作業が完了し、現在は小型船の一部修理を受け入れている。ただ、大規模な修理には対応していないため、宮城県の造船所まで修理に出している漁業者もいるという。 福島県沖の沿岸漁業は2021年3月末で試験操業を終了し、本格操業に向けて段階的に水揚げ量を増やしていく方針。造船所の再稼働のめどが立たない中、近隣自治体からは本格操業に向けた造船計画の遅れを懸念する声が出ていた。 造船所の担当者は2日、県の支援策を受け、「大きな前進につながる。一つ一つ前に進められるように取り組む」と語った。 地元の相馬双葉漁協は2月の発災直後、相馬地方市町村会に支援を要望した。これらを受け、相馬市は漁業振興対策事業として2250万円の支援を決めた。南相馬市と新地町も9月定例議会に支援に向けた補正予算案を提出する予定。県漁連や相馬双葉漁協も支援を検討するとみられる。