米津玄師「毎日」は“攻めの姿勢”で寄り添う1曲に 軽快なリズムで本音を吐き出す真骨頂
米津玄師、ポップなサウンドだからこそ効いてくるパンチライン
また、この「毎日」で歌われている内容は、ある意味でブルースと言えるものだ。しかし、その音作りは徹底的にポップで、どこまでもキャッチー。そのギャップに彼の真骨頂が宿っている。サウンドの土台となるリズムは跳ねていて、思わず足を動かしたくなるような楽しさがある。非常に動的で、歌詞のダウナーな世界とは一線を画するポイントだ。 こうしたサウンドと歌詞のギャップは、米津作品に一貫した特徴である。たとえば、NHK連続テレビ小説『虎に翼』主題歌として繰り返し聴かれることを前提とした「さよーならまたいつか!」には声を荒げて歌う〈空に唾を吐く〉といった表現を差し込んでみたり、PlayStationのCMソングに起用された「POP SONG」には〈全部くだらねえ〉というパンチフレーズが存在する。跳ねるリズムと皮肉じみたリリックの融合という意味では、「Flamingo」あたりのセンスにも通じるものがあるだろう。 キャッチーで射程範囲の広いポップなサウンドに、時には棘のある尖った言葉を、時には飾らない正直な思いを乗せて歌ってみせる。だからこそ、彼の歌は多くの人々の心に響くのだろう。 米津のそうしたソングライティングのセンスが変わらず発揮されたのが、「毎日」という楽曲だ。数多くのヒットソングを世に送り出してきた彼は、今も自分のやり方で攻め続けている。
荻原梓