「ひとまず最終局に持ち込めたのはよかった」藤井聡太叡王、カド番重圧はねのけ2勝2敗のタイに…叡王戦五番勝負第4局
将棋の藤井聡太叡王(21)=竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖と八冠=が31日、千葉県柏市の「柏の葉カンファレンスセンター」で指された第9期叡王戦五番勝負第4局で挑戦者の伊藤匠七段(21)に132手で勝利した。負ければ八冠陥落の危機だったが、踏みとどまりシリーズ成績を2勝2敗とした。 安堵(あんど)の1勝は王者の舌を滑らかにした。多くの観客を前に大盤解説場で、次局への意気込みを聞かれた藤井は「次が持将棋(引き分け)でなければ最終局になるので…」。2月の棋王戦第1局で持将棋に持ち込んだ伊藤をけん制するような“冗談”を珍しく口にし、大きな笑いが起きると「全力を尽くして悔いのないように戦いたいと思います」と続けた。 今まで一度もタイトル戦敗退がなく、22連覇中の藤井にとって土俵際の勝負は本局が初めて。「(カド番が)発奮の材料になったか、プレッシャーになったか」と聞かれると小さく何度もうなずき「もちろん自分にとっては大きな一局なので全力を尽くしたいと思っていました」と明かした。 戦型は4局連続で両者得意の角換わりに。藤井は右玉、伊藤が穴熊に組み替えを見せたところで戦いは激しさを増した。午後に入ると藤井が伊藤玉の頭を狙う7筋8筋の攻めが止まらず。優勢を築き、勝ち切った。 勝負はフルセットにもつれ込んだ。「ひとまず最終局に持ち込めたのはよかった」。第5局は今月20日、甲府市「常磐ホテル」で指される。(瀬戸 花音) ◆伊藤七段「残念」 〇…あと1勝で初タイトルの重圧と戦った伊藤は1分将棋で投了。「もう少し熱戦にできそうなところで、ちょっとバランスを崩して残念」と低いトーンの声で悔いた。叡王戦は2017年にタイトルに昇格して以降、最終局までもつれたのは2度(20年永瀬拓矢叡王VS豊島将之竜王=当時は七番勝負、21年豊島叡王VS藤井王位・棋聖)あり、ともに挑戦者が制したという“伊藤有利”のデータもある。「次も注目される舞台。よい内容の将棋を」と気を引き締めた。
報知新聞社