ガザ停戦の安保理決議案、米国が拒否権 支援物資が40日間届いていないとされるなか
国連の安全保障理事会で20日、パレスチナ・ガザ地区での停戦を求める決議案の採決があり、アメリカの拒否権行使によって否決された。ガザで現在の紛争が起きてから、アメリカが友好国イスラエルをかばうために拒否権を行使したのはこれで4回目。ガザでは特に北部で食料不足が深刻化している。 決議案は、ガザでの戦争を「直ちに、無条件で、永久に終結させ、残っているすべての人質を直ちに無条件で解放しなくてはならない」と要求する内容だった。理事国15カ国のうち14カ国が賛成票を投じた。 アメリカのロバート・ウッド国連大使代理は決議案について、「停戦と人質解放の関連性」を示す必要性を「放棄した」ものだと主張。ガザのイスラム組織ハマスに「危険なメッセージ」を送る内容だとした。 国連安保理は、拒否権をもつ常任理事国5カ国と、選挙で選出される非常任理事国10カ国で構成されている。 今回の決議案は非常任理事国のグループが提出。「パレスチナ人を飢えさせようとするいかなる取り組みにも反対する」としていた。 ■ガザ北部で深刻な食料不足 パレスチナ人の状況をめぐっては、イスラエル軍に包囲されているガザ北部の一部で支援物資が40日間全く届いておらず、「生存のための環境が厳しくなっている」と、国連が警告している。 国連によると、ガザ北部のベイトハヌーン、ベイトラヒア、ジャバリアで今月、推定6万5千~7万5千人を支援しようとしたが、すべて拒否されるか妨害された。そのため、パン屋や調理場は閉鎖せざるを得ない状況だという。 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、国連機関が今月1~18日にガザ北部の包囲地域を対象に支援行動を31件計画したが、うち27件はイスラエル当局に拒否され、4件は深刻な妨害を受けたという。 ベイトラヒアのカマル・アドワン病院のフッサム・アブ・サフィヤ院長は20日、状況は「いっそう破滅的」になりつつあると警告。院内では多数の子どもに栄養不良がうかがわれ、深刻な脱水症状で死亡した高齢男性もいるとした。 国連が支援し今月発表された調査では、ガザ北部で飢餓が差し迫っている可能性が高いとされている。 ガザ北部で6週間にわたって攻撃を続けているイスラエル軍は、ハマス戦闘員の再編成を防ぐのが軍事行動の目的だとし、民間人の避難や病院への物資配送は円滑に進むようにしていると説明している。 ■拒否権行使への反応 アメリカの拒否権行使を受け、中国の国連大使は、「パレスチナ人の命には何の意味もないのか」と問わずにはいられないと述べた。 フランスは、国際人道法が踏みにじられていると主張。唯一の対応は、即時かつ恒久的な停戦であるべきだったとした。 イギリスは、戦争を終結させ、ガザでの苦しみを止め、すべての人質の即時解放を確保したいと述べた。 アメリカに対する最も厳しい批判は、理事会の扉の外で上がった。 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のルイス・シャルボノー国連代表は、「イスラエル軍がガザでパレスチナ人に対する犯罪を犯し続けるなか、イスラエルの免罪を確実にするため」、アメリカが「またも」拒否権を行使したと非難した。 イスラエルはこの非難をはねつけている。 ガザでの現在の戦争は、ハマスの武装集団が昨年10月、イスラエルのコミュニティーを攻撃し、約1200人を殺害(イスラエルの集計)、250人以上を人質に取ってガザに連れ去ったことで始まった。 ガザの保健当局によると、それ以来ガザでは4万3920人以上が殺害されている。 (英語記事 US vetoes Security Council's Gaza ceasefire resolution/Virtually no aid has reached besieged north Gaza in 40 days, UN says
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