《都市を支える下水道》普及率日本一 残る課題・水質改善目指す都の対策
きょう9月10日は『下水道の日』に制定されています。これは、1961(昭和36)年に著しく遅れている下水道を全国的に普及させるために、当時の建設省・厚生省が呼び掛けて定められました。制定から55年が経過し、日本の下水道普及率は目覚ましく改善しています。 日本下水道協会によると、46都道府県(※東日本大震災の影響で一部調査できない福島県は対象外)の下水道普及率は77.6%。そのうち、もっとも普及率が高い東京都は、99.5%に達しています。東京23区に至っては、1994(平成6)年度に普及率100%、多摩地域でも本年度中に100%に達する見込みです。都では、いまや下水道は当たり前のインフラになっています。 前回、下水道の浸水対策を取り上げましたが、今回は下水道の水質改善について見てみましょう。
隅田川花火大会中止の過去も 河川水質悪化で下水道整備に着手
東京湾に面する葛西臨海公園は週末になると多くの人でにぎわいます。臨海公園に接する砂浜は葛西臨海公園と一体化していますが、葛西海浜公園という別個の名称があり、区別されています。昭和30年代まで、夏になると葛西海浜公園の砂浜には多くの遊泳客が押し寄せていました。しかし、昭和40年代になると海の水質が悪化し、遊泳は禁止されてしまったのです。 昨年7月18日、都は海の水質が改善されたとして葛西海浜公園での遊泳を許可。東京湾でも泳ぐことができるようになりました。高度経済成長期に水質が悪化したのは、東京湾だけではありません。実は都を流れる河川すべてが汚染されていました。当時の状況について、都下水道局計画調整課の担当者はこう話します。 「東京湾や都を流域とする河川の水は汚いというイメージが定着していますが、もっとも汚染されていたのは昭和40年代頃です。当時の多摩川は、各家庭から出る生活排水で水質は最悪の状態でした。そうした水質汚染は、多摩川だけが例外ではありません。隅田川でも水質が悪化したことを理由に、1961(昭和36)年から花火大会が開催されなくなってしまったのです」。 街を流れる小さな河川でもゴミが沈殿し、汚臭を放っていました。東京はあちこちに川が流れている都市ですから、街のいたるところから悪臭が漂う状態だったのです。行政は悪臭問題を解決するべく、蓋をするように河川を暗渠化したのです。 しかし、それでは根本的な解決ではありません。また、暗渠化によって、東京から水辺空間が失われてしまったのです。そうしたことから、都は下水道の整備に着手します。河川に垂れ流されていた生活排水などは、下水道管を通って処理するようになります。