「佐々木蔵之介だから許せる」? 嫌悪を巧みに回避した宣孝、絶妙な目線に称賛【光る君へ】
嫌悪を巧みに回避した、佐々木蔵之介の演技力
そうやって少しずつ、宣孝がまひろに「まだまだ生きていたいと思ってしまう」というほどの感情を抱かせるに至るまでを、半年かけて丁寧に描いてきたわけだけど、SNSで数多く聞かれた意見が「これが佐々木蔵之介でなかったら気持ち悪い」だ。派手好きでちょっとお金に汚い初老の男が、20も年下の親戚の女の子に猛アタックをかけて口説き落とす・・・という説明だけだと、確かに若干引いてしまう。 ただこれが、どんな善人も悪人も、色男もダメ男もひょうひょうと演じてしまう佐々木だと話は別だ。政治や経済を見る目は非常に的確で有能だけど、「神様から目立つために」と常識外れの行動もあっけらかんと取ってしまう、人間としての振り幅。そしてまひろにアプローチするときの、狼のような鋭さのなかにちょっとした照れが見えてしまうという絶妙な目線も、みずからがプロデュースする舞台などで、あえて難しい役柄に挑戦して技術を鍛えつづけてきた、佐々木の演技の蓄積があってこそだろう。 ■ プロポーズのシーンにトンチキBGM!? 視聴者沸く そしてラスト10秒で、ついに出てきた「わしの妻になれ」という、これ以上はないほど超ドストレートなプロポーズ。第1回から登場してはや幾星霜、ついにこのときが来た!! と視聴者のボルテージが上がったのに反比例するように、流れてきたのは「ブンチャカブッチャ・・・」というおもしろBGM。これにはSNSで「宣孝マジ告白なのにギャグシーンみたいな扱いで笑ってしまった」「危険な恋はエレキギターで安全な求婚はトンチキBGMなの、精神衛生に良い」と、ツッコミめいたコメントが並んでいた。 お互いを激しく求め合う道長との関係は、非常にロマンチックで刺激的ではあるけれど、これが日常になると疲弊しそうな感じもする。その点宣孝のように、お互いに言いたいことを言いあえて、ちょっと思いが食い違っても「ごめんごめん」で許しあえる関係のほうが、心おだやかでいられるはずだ。ある意味では、最良の道が開けたと言えるまひろだが、一方でそれを知ったときのまひろ強火担・道長の絶望ぶりが、今から大変楽しみ・・・いや心配である。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月16日放送の第24回『忘れえぬ人』では、宣孝から突然求婚されたまひろの反応と、定子が一条天皇の姫皇子を生んだことで、様々な問題が立ち上がってくるところが描かれる。 文/吉永美和子