特産アスパラ「ラスノーブル」苗復活へ JAと美瑛町が連携
北海道のJAびえいは、美瑛町と連携し、種子の取り扱いが中止となり存続が危ぶまれている特産アスパラガス「ラスノーブル」の苗の復活に向けて事業を展開している。今年から、試験圃場(ほじょう)での出荷が始まった。 「ラスノーブル」は一般的なアスパラガスより太くて甘く、柔らかいのが特徴だ。町内では30年ほど前から栽培しており、JAの直販商品として根強い人気を博してきた。アスパラガスの生産者はJA管内に83人おり、栽培面積は約86・7ヘクタール。このうち「ラスノーブル」の生産者は46人で、栽培面積は29・5ヘクタールある。 しかし、オランダで生産されていた種の販売が2010年に終了してしまったことが課題となっていた。アスパラガスは定期的に株を更新する必要があるが、種がなければできない。町内のアスパラガスの栽培面積は減り、「ラスノーブル」生産は窮地に立たされていた。
培養技術に注目 苗の生産成功
そこで着目したのが、苗の細胞を培養し、増殖する技術だ。町とJAは20年に苗の復活プロジェクトを発足。ワサビ苗の培養技術を持つ食品メーカーと連携し、苗を生産することに成功した。 21年からはクラウドファンディングを募り、より安定生産するための技術確立や、農地で実際に栽培する実証を実施。今年5月には実証で植えた苗から初めて収穫できた。現在実証中だが、プロジェクトでは、生産した苗を25年から生産者向けに供給できるよう目指している。 新しい苗を待ち望んでいる生産者からは期待の声が上がる。アスパラガス4ヘクタールを栽培する、白金アスパラガス生産部会部会長の沢尻朋希さん(51)は「さまざまなメディアでも取り上げてもらい、徐々に知名度も上がってきているラスノーブルが今後も消費者に届られるようになってほしい」と話す。 JAは「町内全体でのアスパラガスの生産は減少傾向にあり、ラスノーブルの復活を皮切りに、今後のアスパラガス生産全体の一層の振興につながることを期待している」(販売部青果課)と強調する。 再興に向けたPRも本格化してきた。町やJA、農業関係組織などでつくる協議会は「ラスノーブル」のキャラクターを作成し、今年5月に「ビアラ」と命名。地域内外でのさまざまな宣伝などに活用する予定だ。
日本農業新聞