『グレイトギフト』津田健次郎の“闇落ち”演技が恐ろしい 波瑠演じる久留米の驚きの一言も
ドラマ『グレイトギフト』(テレビ朝日系)において、主人公の藤巻(反町隆史)だけは正義であると信じたい人物だ。第1話で「ギフト」を巡り白鳥(佐々木蔵之介)と手を結ぶことにはなるが、そこには命を握られている妻・麻帆(明日海りお)を守りたいという思いがある。葛藤の上での、苦渋の決断だ。筆者はその藤巻を“闇堕ち”だとは捉えていないが、第3話での郡司(津田健次郎)を見て、「ああ、これは完全に闇落ちだ……」と思ってしまった。 【写真】驚きの一言を告げた久留米(波瑠) 不倫関係にある看護師長・鶴下(片山萌美)から、藤巻に「突発的な心不全患者が病院に出たら知らせてほしい」と頼まれていたことを知った郡司。教授としての地位を突如藤巻に横取りされ、白鳥から梯子を外されたと感じていた郡司が、藤巻や白鳥の脅威となっていくのかと思っていたが、その逆。郡司は白鳥に取り込まれ、再び「ギフト」を使った殺人が起こってしまう。 殺されたのは、医学系大学連合会議副議長・大泉篤(西岡徳馬)。久留米(波瑠)曰く、金、権力に溺れた医者と言うにもおこがましいクズだ。議長の座を狙う白鳥が次に狙うのは大泉だと察した郡司と藤巻は、軽井沢で行われるゴルフに同行し、大泉を守ろうとするも、この時にはすでに郡司は白鳥と結託。 “ボンクラ”こと藤巻の存在によって大泉を油断させ、郡司はワインに「ギフト」を混入し、大泉を殺害した。例えば、ドラマでは人を殺してしまったことの罪を悔やんだりもするが、郡司は形だけの救命措置を淡々とこなし、作業のような救急への連絡をする。「命を救いたい」と医師として真っ直ぐだった若い頃の郡司はどこにもいない、権力を持ってして上に行くことだけを考える“悪”に成り下がってしまった。 真に恐ろしいのはここから。白鳥から理事長室に呼び出された藤巻。そこには郡司の姿もあった。白鳥は藤巻の妻の主治医、郡司は担当医として手術の話を始めるのだが、「ギフト」で殺人を犯したばかりの2人が「患者の命を救いたい」とオペの話をするのは、狂っているようにしか見えない。当事者である藤巻にとっては尚更だ。 そもそも藤巻が「ギフト」の培養を続け、白鳥と協力するのは、妻の手術が終わるまでという約束だった。オペは無事に成功。しかし、白鳥は藤巻にスッと近づき、「これからもギフトを頼みますよ」と耳元で囁く。いつどうなるか分からない。心筋梗塞で亡くなることも――つまりは、妻に「ギフト」を使うこともある、白鳥に命を握られている状況は一切変わっていないのだ。 白鳥と郡司、さらに白鳥を疑っている刑事の神林(尾上松也)との板挟みにある藤巻はすっかり疲弊していた。研究室で暴れる藤巻を止めたのは久留米。2人は「ギフト」についての共闘関係にあるが、白鳥の殺人や大泉の死の真相に近づく久留米を藤巻は疑っていた。それは合理的な思考の持ち主である久留米が、不合理な行動を取っているから。「君が最初にギフトを使った犯人じゃないのか」と藤巻は問いかけるも、久留米はそれを否定。返ってきたのは「私はただ藤巻先生に好意を抱いているんだと思います。好きだから放っておけないんです」という驚きの答えだった。 久留米が以前の職場をクビになっているのは上司との不倫が原因だったという噂もフックになっているが、それだけではまだ不合理なのでは……という見方もできる。また、水面化で動き続けているのが、「アルカナム」のオーナー・杏梨(倉科カナ)。「一体何があったのか、調べて私に詳しく教えてくれませんか?」と本坊(筒井道隆)をスパイとして手のひらで転がす彼女が、今後のキーマンになっていくのは間違いない。
渡辺彰浩