アウディe-tronの可能性とは? 電気自動車の将来について考える
アウディがBEVの可能性を拡げていく
北海道を舞台にしたサステナブル・フューチャーツアーでは、最北端、稚内(わっかない)で北豊富変電所を訪れたあと、「サロベツ湿原センター」で北部の生物多様性の現状に触れ、そのあと、幌延町のオトンルイ風力発電所を訪れた。 年間平均風速7m、風速10m以上の日が90日を超すという稚内で、2023年から稼働を介した北豊富変電所は、風力発電を利用する変電・蓄電施設。「蓄電量はe-tron、8000台分に相当します」と、アウディジャパンではする。 その南には、道道106号線に沿い約3kmにわたって28基の陸上風車が並ぶオトンルイ(アイヌ語で浜にある道の意だそう)風力発電所がある。幌延町の風力発電プロジェクトにより2003年から本格稼動しているそうだ。約50mの直径をもつブレードがぐわんぐわんと音を響かせて回り続けている様子は圧倒的だ。 オトンルイ発電所を運営している幌延風力発電株式会社によると、年間予想発電量は約5000万kWhだそう。「1年間で、一般の家庭が1年間に消費する電力の約12,000世帯分に相当し、石油火力発電所で発電した場合と比べて、CO2の排出量で約35,000tの削減になります」と、ホームページにある。 2日目には、前出のシェーパー・ブランドディレクターが参加しての「未来共創ミーティング」が、旭川で開催された。札幌市厚別区の北里学園大学の学生らとともに、NPO法人「北海道グリーンファンド」の鈴木亨理事長と、北里学園大学経済学部経済学科の藤井康平講師が参加。 印象的だったのは「北海道の自然エネルギーで作った電力を本州に送れるシステムの構築があればいい」という発言だった。話題になっている長距離海底直流送電とか、蓄電池による輸送である。北海道で作れる電力は大きくても需要が足りない。余ってしまうのが現状なのだ。 「電気が余るのは、いってみれば、明るい情報。日本はBEVに向かない市場……と、判断されないようにするのが、自分の仕事でもあるので、この先(バッテリー駆動車の普及と並行して)電気を供給するインフラ(充電ステーションとか)が、整っていくといいですよね」 シェーパー・ブランドディレクターは、取材が終わったあと、そう結論づけて話してくれたのだった。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)