新入社員も利用する新ビジネス「退職代行サービス」が台頭するワケ
【仕事力がアップする経済ノート】 人手不足が深刻な企業にとって新たな課題が持ち上がってきた。本人に代わり就職先の企業に退職を伝える「退職代行サービス」という新たなビジネスの台頭だ。 かつて局アナは花形職だったが…次々と転職する姿にテレビ業界の衰退を見た 現在、退職依頼の数が業界で最も多い「退職代行モームリ」(運営会社アルバトロス、東京・大田区)の谷本慎二代表が、GW後に退職代行の依頼は急増しているとこう言う。 「本日(5月13日)1日だけで167件の依頼がありました。すでに(午後1時半時点で)120件の退職が確定し、本日中に依頼されたすべての方が職を去られることになります」 そして、167件の依頼のうち27件が新入社員だという。さらに5月1日から14日午後2時までの依頼は825件で、そのうち117件が新入社員というのだ。 厚生労働省が昨年10月に公表した、2020年3月卒業の新規学卒就職者の離職状況では、就職後3年以内の大学卒の離職率は32.3%(1年目10.6%、2年目11.3%、3年目10.4%)。こうした中で注目されているのが退職代行会社なのだ。退職代行サービスを利用する理由を先の谷本氏がこう説明する。 「依頼者の6割は入社6カ月未満の方ですが、会社とのコミュニケーションが難しく、入社したばかりで退職の意思を自分から言いにくい。入社早々で辞めたくても誰に伝えていいのか分からないといった対面での退職が苦手な方が多いですね」 ■10年以上勤務した社員からも依頼 一方、新入社員に限らず、「退職を伝えても認めてもらえない。退職届を破られた」といった10年以上の長期勤務した社員からの依頼も多いという。 退職代行会社の利用者が増え、すでに多くの同様企業が存在している。退職代行会社は、雇用者と直接対話を避けるサービスは同じだが、会社側との訴訟にも対応できる弁護士や法律事務所が運営する会社や、労働組合、民間企業が運営するケースでサービスに違いがある。先の「モームリ」は、弁護士事務所と労働組合と提携しており、退職に関して交渉が必要となると労働組合の組合員が団体交渉権を用いて本人に代わり交渉を行う。料金は会社により若干違うが、前者のケースで正社員2万2000円、アルバイト1万2000円だ。 ディスコキャリタスリサーチの「入社1年目社員のキャリア満足度調査」では、転職を検討中が39.3%、現在転職活動中が3.7%とある。同社の吉田治氏がこう述べる。 「入社後の配属にほぼ半数の社員は何らかの不満を持っています。退職しても次の会社があるという市場環境が、我慢せず簡単に退職を決断させているんです」 人材確保に苦慮する企業は、新たな課題への対応を迫られている。 (ジャーナリスト・木野活明)