松本まりかの“ピュアさ”が光る リアルを突きつけてくる『ミス・ターゲット』の面白さ
ど直球なラブストーリーでありながら、リアルを突きつけてくる『ミス・ターゲット』
とくに、第3話はすみれのピュアさが色濃く出ていた回だった。宗春が、“同業者”のちょーだい女子に騙されそうになっていることを知ると、お金持ちの男性とのディナーを蹴ってまで、彼のもとに駆けつける。そして、「彼のこと、騙さないでください。お客さんのために、一生懸命和菓子を作ってて、その和菓子でたくさんの人を幸せにしてて。そういう人のお金、取らないでほしいんです」と哀願したのだ。 「(宗春のような生き方は)わたしには、絶対にできない生き方だから」と口にしたときのすみれの表情。“本当はわたしもあんなふうに生きていきたい”という切なさが伝わってきて、胸が苦しくなる。 すみれと宗春は、お似合いすぎるくらいにお似合いだ。宗春は、すみれがどれだけ強がったことを言ったとしても、からかわない。すべてを理解した上で、まるっと受け入れてくれる。 「すみれさん、好きです」と宗春に抱き寄せられたとき、すみれはまるで少女時代に戻ったかのようなピュアな表情を見せていた。これまで、ひとりで生きていくために虚勢を張るしかなかった彼女が、ようやく纏っていた鎧を外せた瞬間だったのではないだろうか。 ただ、いくら悪人限定の詐欺師といえど、人を騙してきたことには変わりない。ここで、“運命の人に出会えました。めでたし、めでたし”で終わらないのが、『ミス・ターゲット』の深いところだ。宗春の父・竜太郎(沢村一樹)は、詐欺を扱う知能犯としてすみれのことを追っている。そのため、宗春と結ばれるわけにはいかない。 ようやく幸せになれそうなのに、今までの人生がこれからの人生の前に立ち塞がってくる。ど直球なラブストーリーでありながら、リアルを突きつけてくるところが本作の面白さだなぁと思う。
菜本かな