西日本の渇水 農家綱渡り 牛の飲み水、野菜に打撃
岡山で農業用水ストップ、水源枯れる
西日本中心に雨不足による渇水が深刻化し、農業にも影響が広がっている。作物の肥大が進まず収量が減少。牛の飲み水などの確保に苦慮する農家もいる。生産資材高騰で打撃を受ける農家経営に追い打ちをかけている。 「雨が降る夢を見るほどだ。早く降ってほしい」。岡山県西部の高梁市で酪農や和牛の繁殖・肥育を手がけ、460頭を飼養する三宅ファーム専務の三宅勇輝さん(36)は気をもむ。 同市は11月20日から、貯水率が大幅に低下した農業用の大竹ダムで取水を中止した。ダムのある同市川上町全域では、現在も農業用水の供給が止まっている。 同ファームの同市川上町にある牧場では牛の飲料用や搾乳機の洗浄などに1日約20トンの水を使う。大竹ダムからの水供給が中断したため、山道を車で10分走った所にあるため池から水をくむ。牛乳を入れるバルククーラーを購入し、一晩かけて水をためて使う状況が続いている。 11月30日時点の同ダムの貯水率は23・6%。市は「ダム施工から半世紀近いが、渇水による断水は初めてだ」(農林課)と話す。 同市備中町で和牛380頭の繁殖・肥育一貫経営を家族で営む江草牧場の江草真一さん(30)は「父の代から数えても、水不足は初めて」と話す。 同牧場では二つの水源から水を引き、肥育用牛舎で使っていた。だが、片方の水源がほぼ枯れたため、その分は水道水を利用して賄っている。11月25日までのおよそ1カ月間で約30トンの水道水を使用。水道料金は普段の2倍以上だった。 「飼料が高騰、枝肉価格が低迷する中での渇水は厳しい」と江草さん。「残る水源もいつまで持つか分からない」と顔をこわばらせる。
日本農業新聞