今年春に就職した県内の大学生などの宮城県内企業への就職率が過去最低となりました。一方で、高校生は地元への就職希望が８割を超えていますが、少子化と人口減少のなか人材確保の模索が続いています。 宮城県大崎市の松山高校です。今週末、大崎地域の企業の紹介イベントを１・２年生が見学する予定で学校からの説明が行なわれていました。 松山高校 熊谷孝進路指導部長 「こんなに身近なところに、様々ないい企業があることをぜひ知ってもらいたい」 イベントを主催おおさき産業推進機構 堀切川一男理事長 「そこの会社のものづくりが、どういうところから始まって、新しいものを作っているのか教えてもらえる。それが高校生にとっては刺激的だと思っている」 宮城県内では、高校卒業後の求職者のうち、およそ８割が県内での就職を希望し、そのほとんどが実際に県内で就職しています。 しかし、少子化もあり、地方の中小企業の人手不足は年々厳しさを増しています。 大崎市のこの会社は磁石を使った非接触型の歯車を自社開発し、主力商品としています。毎年、高卒者を最低１人は採用していますが、応募は年々減っているといいます。 （株）プロスパイン 渡部竜也代表取締役 「今はまだ年配の方たちもいるので、仕事としては回っているが、将来を考えると明らかに人出が足りなくなってくる。いい製品だったりいい技術を持っていても、人がいないことで事業が継続できない事態になることは経営者として避けたい」 一方、大卒者の県内の企業への就職率は低下傾向です。 宮城労働局の調査では、今年春に卒業した県内の大学生などの県内での就職率は３９.２パーセント。過去最低の数字です。 宮城労働局・職業安定課 伊藤文武課長 「オンライン面談も導入する企業も増えている。県外企業への応募のハードルも下がっている」 県内の企業１３社が大学生を対象に開催した合同のインターン。参加企業の担当者はその狙いをこう話します。 （株）ＳＫホールディングス 高橋あさみさん 「全国規模で戦える営業や商材があることがなかなか伝わらないことは、県内の中小企業の課題としてひとつあるのでは」 実は、Ｕターンなど出身地で就職したいという大学生・大学院生は全国で６割以上という調査結果もありますが、地方の企業の存在や仕事内容が学生に伝わっていないというのです。 そうしたなか、県内の企業の魅力を主体的に発信しようというのが、この合同インターンです。 県内出身で山形市の大学に通う、跡邊朋佳さん（２１）。県内での就職を希望していて、仙台市に本社を置く専門商社でのインターンが決まりました。 跡邊朋佳さん 「私自身、これをやりたいというのがはっきりとは決まっていないので、自分自身の可能性を、自分で考えながらかつ、社会人の皆さまと協力しながら探していきたい」 インターン先は主催者の割り当てで決まりますが、跡部さんは前向きに捉え、インターンが始まりました。 この日は、他の企業でインターンを進める学生と合同で倉庫を見学しました。この会社は食品トレーなどを扱う専門商社で、１６００以上の会社と取り引きをしているということです。 見学した倉庫では、１万点以上の商品を扱っていて学生たちは膨大な商品の管理方法を学びました。 学生たちはその後、グループワークも実施。最終的にインターン先の事業内容を生かしたアイデアを発表することになっていて、情報を共有しながら考えを深めていきました。 跡邊朋佳さん 「他の企業の学生もいて、交流をしながら企画を考えたりもできたので、貴重な経験になった」 （株）高速 竹内勝さん 「すごく勉強熱心というか、『高速』に対してどういう強みがあるか、自分から学ぶ姿勢もあって、発表の時もすごくいいものを作ってくれるのではないかと思っている」 発表の日、会場には企業の経営陣も集まりました。学生たちは学んだ成果を存分に発揮します。システム開発会社でインターンをした学生は県の観光をサポートするアプリの提案、飲食業の会社でインターンをした学生は街中で食べ歩きをしながらスタンプラリーをするイベントの企画、などアイデアが次々に飛び出します。 跡邊さんたちの発表です。 跡邊朋佳さん 「これ見たことあるよという方いらっしゃいますか。いっぱいありがとうございます。これはお弁当とかお寿司が入っている食品トレーです」 インターン先の営業力や商品開発力を生かして、消費者に食品トレーのリサイクルを促進するアイデアを発表しました。 結果、跡邊さんたちは「実現したら面白そう」と、賞をもらいました。 （株）高速 赫裕規代表取締役 「若い人のアイデアを事業に結び付けていければと感じました」 大学生活のかたわら１か月間、インターンを続けた学生たち。充実感があったようです。 参加した学生 「皆、否定的じゃないので、どんなことも実現できそうな感じがして、この３人でよかった」 「今までは知らなかった企業の強みやいいところをたくさん知れたのが、すごくよかった」 跡邊朋佳さん 「このインターンを通して、こんな素晴らしい会社が宮城にたくさんあったんだというので、より宮城で就職活動をしていきたいという思いが生まれた」 学生に選ばれる企業へ。自社の魅力を伝える場の重要性は、年々高くなっています。