カナダ国籍に変えた美人柔道家の出口クリスタが初の金獲得で東京五輪の最大ライバルとして浮上
柔道の世界選手権の第3日、女子57キロ級が27日、東京・九段下の日本武道館で行われ日本生まれ日本育ちながら2年前にカナダに国籍を変えた出口クリスタ(23)が決勝戦で大会2連覇を目指した芳田司(23、コマツ)をゴールデンスコアの延長戦の末に下して初優勝を飾った。2人は高校時代のインターハイから対決していた宿命のライバルだったが、出口が急成長。来年の東京五輪では国籍を変えた美人柔道家が日本勢にとって最大のライバルとなって立ちはだかることになった。
「勝手に体が動いた」電撃の体落とし
クリステルではなくクリスタ。巨漢のカナダ人の父親の名前だが、名は体を表すというのは本当だ。 美人柔道家、出口クリスタは、まず取材ゾーンで海外メディアにつかまり、流暢な英語で、今の気持ちを「サプライズ!」と表現した。 記者会見では、「すみません。日本語で対応させていただきます」と日本語で応対。 「率直な気持ちは、まさか優勝できると思っていなかったので驚いている次第です」と、ここでも「驚き」という言葉で初優勝の気持ちを表現した。 運命の再会だった。 リオ五輪金メダリストのラファエル・シルバ(27、ブラジル)を準決勝で破って決勝に進出したのは、大会2連覇を狙う芳田。出口が松商学園時代から戦ってきた同学年のライバルである。過去の対戦成績は、芳田の4勝3敗。昨年の世界選手権でも2人は対戦、出口が準決勝で敗れている。 決勝は魂がぶつかり合う激闘になった。最初に出口が巴投げで仕掛けると、今度は芳田が得意の内股で攻めた。だが、出口は体を寄せて潰しにいく。お互い手の内を知り尽くしている。 「なるべく頭を下げないことを意識した。頭を下げると内股が来るので」 出口は、そう対策を練っていた。ケンカ四つの組み手では、できるだけ背筋を伸ばしたが、寝技の攻防では、執拗に関節を狙われ、完全にコントロールされた。畳に体を密着させ懸命に耐えるが、徐々に芳田にスタミナを奪われていく。 試合後、全日本女子の増地克之監督が「終始芳田ペースだった」と振り返ったような展開だった。 残り30秒を切って出口は指導を受けた。 だが、互いに決定機を作れないまま4分が過ぎ、試合はゴールデンスコアの延長戦にもつれこんだ。出口は息が上がっていた。寝技で右肘を攻められ「待て」が出ても、すぐに立ち上がれないほど。 2分12秒に芳田に指導が与えられた直後だった。出口は芳田の左手を取って、袖釣りでバランスを崩し、バックをとると、芳田の腕を固めたまま、左手で腰をつかみ後ろに投げ捨てた。 電撃の谷落としである。 「4分、そしてGSは何分戦ったかわからないんですが、負けているなあと思っていた。最後は気持ち。勝手に体が動いた」という。 茫然とした表情の芳田は、「気落ちの弱さが出た。どっちの気持ちが強いかの差で負けた」と、一方的に攻めながらも、一瞬の隙を見せた自らの戦いを悔いた。