Z世代の「リアルなSDGs」とは? 月200人の若者と対話するSHIBUYA109 lab.所長・長田麻衣氏に聞く
SDGs(持続可能な開発目標)を学校で学ぶなど、社会課題に関心が高い「SDGsネイティブ」といわれるZ世代。2024年3月22日に東京・渋谷で開催される日経SDGsフォーラム特別シンポジウムには、「若者マーケティング機関」のSHIBUYA109 lab.所長、長田麻衣さんがパネルディスカッションに登場する。ファッションビル「SHIBUYA109」に集まる若者へのヒアリングや意識調査を手掛けてきた長田さんに、Z世代にとってのリアルなSDGsや、就活生や新入社員、消費者としてZ世代と向き合う企業に求められることを聞いた。
毎月200人の若者とコミュニケーション
――SHIBUYA109 lab.について教えてください。 「主に15~24歳の『around20』の若者への調査や発信を通じ、SHIBUYA109の事業と外部企業のマーケティングを支援するチームとして2018年に発足しました。SHIBUYA109館内でのヒアリングやグループインタビュー、意識調査などで、この世代のトレンドや価値観、行動についてさまざまな角度から探っています」 「2021年にSDGsをテーマに活動するSHIBUYA109 lab. EYEZを立ち上げ、ワークショップや商品開発などのプロジェクトも展開しています。こうした取り組みで、月に延べ200人前後の若者とコミュニケーションをとっている計算になります。そこで興味がある人には対話アプリ『LINE』で登録してもらい、現在約1300人とつながっています」
Z世代はSDGsに「関心はあるけれど行動に移せていない」
――若者にリサーチするだけでなく、参加型の活動もあるのですね。 「SHIBUYA109 lab. EYEZを始めたきっかけは、2020年に高校生と大学生を対象に実施したSDGsに関する意識調査です。当時、社会課題解決に関心があるかを聞いた質問に『すごく関心がある』『関心がある』と答えた割合は約6割。一方で具体的に何かに取り組んでいる、もしくは周りが取り組んでいるという回答は合わせて2割弱にとどまり、『関心はあるけれど行動に移せていない』という実態がわかりました」 「そこで、環境に配慮した繊維素材を手掛ける繊維専門商社のMNインターファッション(東京・港)と共同で、企業と連携しながらアクションを起こせる場所としてSHIBUYA109 lab. EYEZをつくりました。今年は毎月『食』『ファッション』などテーマを設定して企業を招いたワークショップをしたり、コアメンバーが画像共有アプリ『Instagram(インスタグラム)』や動画共有アプリ『TikTok(ティックトック)』の公式アカウントにSDGsに関するショート動画を作成して発信したりしています」 ――コアメンバーはどんな方たちですか? 「今年は以前から継続してEYEZ に参加してくれている人に加え、LINEでつながった約1300人のなかから募集して合計12人がコアメンバーとして活動しています。社会課題についてすごくアクションしているというよりも、2020年の調査のように『関心はあるけれど、どう行動していいかわからない』という層が選ばれているのが特徴です」 「公式SNSにショート動画を投稿するほか、ワークショップの内容についてのミーティングにも入ってもらっています。実際のワークショップにはコアメンバー以外に、LINEやSNSでも告知して20~30人の若者が参加します。『身近な企業の取り組みを聞く機会がなかなかないので楽しい』とポジティブな感想が寄せられていて、企業のほうも商品開発など大学生や高校生と直接接点を持つことが少ない部門の方が多く、若者の話から、発信方法などについて新しい切り口を知ることができるというところを評価していただいています」