日本のインフレはしばらく続く。そこで起こるのは投資しない人から投資する人への富の再分配だ!日本人があまり投資しない5つの要因とは?
日本のインフレはこれからどうなっていくのでしょうか? 私は、日本のインフレはしばらく続くことが避けられない状況だと考えています。なぜなら、日本の物価が過度に低いからです。 【詳細画像または表】 ●日本は物価が過度に低い! 日本と海外の物価の差は、為替が円高になることよりも、日本のインフレが続くことによって調整されるだろう 日本と海外の物価の差は、理論的には為替によって調整されることも考えられます。しかし、私は為替水準の変化よりも、日本のインフレが続くことによって物価の差は調整されるだろうと思っています。 米ドル/円の為替レートが元のレベルに戻ることはないでしょう。それは、日本銀行による低金利政策と資金の潤沢な供給が続いているためです。 海外のインフレの状況や物価と比較してみても、日本の物価は相対的に低すぎます。それが為替で調整されるならば、円安時代になる前の比較的、円が米ドルに対して高いレベルにあった頃よりもさらに円高にしなければならないでしょう。 もし、そうなれば、輸出企業をはじめとして、日本経済に大きな打撃となります。これは誰も望んでいない事態です。 ●今回の日本のインフレでは富の再分配が起こるだろう インフレは富の創出を促す可能性もありますが、今回の日本のケースではむしろ富の再分配が起こると考えられます。再分配によって、富は預金者から労働者、そして資本家などへ移ります。 労働者が賃金上昇の恩恵を受ける一方で、資本家は資産価格の上昇から利益を得ます。投資を行っていない人々、たとえば一部の労働者や資本家(株式、不動産、その他生産的資産への投資を含む)にとって、インフレを長期に渡って乗り越えるためには、投資が不可欠になります。 今後予想されるのは、高齢者世帯で現金を多く持つ世帯から、投資家や働く世帯へ富が移転することです。一般論で言えば、高齢者ほど株式投資の浸透率は低い傾向にあります。 また、日本の投資人口が少ない理由として、国民性や金融リテラシーへの消極的な態度が挙げられます。日本では長い間、「お金」について公に話すことにはネガティブなイメージがあり、また、金融教育の機会が不足していました。 しかし、2022年度から高校の家庭科の授業に「資産形成教育」が導入され始めたのです。その恩恵は社会人や高齢者には及びません。上の世代の人たちにはまだ「貯金=安心」という意識が根強く残っています。一方で、若い世代の人たちが投資に取り組む割合は増えています。 ●日本人はなぜ、あまり投資をやらないのか? 日本人があまり投資しない要因について、よく挙げられることは以下のとおりです。 **消極的な国民性** 礼儀正しさや温厚さ、親切さといった長所の裏側で、「人に合わせる」「シャイ」といった日本人の特性が投資への消極的な姿勢に影響しています。 **お金に対する消極性** 日本ではお金に関する話題がタブー視されており、教育によって金融リテラシーを身につけさせることが不足していました。 **リスク回避の国民性** 安全志向が根強い日本では、リスクを避けたいという姿勢が投資への消極的な姿勢を助長しています。 **投資非課税制度導入の遅れ** 投資非課税制度が普及するのが遅れたことも、投資文化が根づくのを妨げてきました。 **充実した公的年金制度** 公的年金制度の充実が、個人の投資や私的年金への動機づけを弱めています。 ●若い世代も高齢者も、投資を行わなければ、投資する人たちへ富が再分配されてしまう 日本人があまり投資しない要因は以上のとおりですが、こういった状況にある中でも、若い世代については金融リテラシーの向上が見られます。 また、リスク回避傾向は、若い世代では少し改善されています。少額投資非課税制度(NISA)も刷新され、公的年金への依存度は下がっていると見られます。 高齢者は時間が限られているため、不利な立場にありますが、それでもリスクを取り始める必要があるでしょう。 何もせずにいると、預金の価値は減少する一方です。投資にはリスクが伴い、絶対に資産が増えるとは限りませんが、総合的に見れば、何もしないよりは、富の増加が期待できるでしょう。 一方、若い世代にとって、この状況は有利です。 若い世代は時間があるので、それを利用してリスクを管理しながら投資することができるからです。分散投資を行えば、長期的に見て利益を得る可能性が高まります。これは時間が限られている高齢者には難しいことです。 そして、働く世代は賃金上昇を通じて、インフレの負の影響を多少なりとも緩和できるでしょう。 結論としては、若い世代も高齢者も、投資を行わなければ、投資する人たちへ富が再分配されてしまう可能性が高いと言えるのです。 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株のポートフォリオ提示など資産運用を助言するメルマガを配信中。
ポール・サイ
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