逃避行の苦難、絵画で 元開拓団員の原画展開催中 満蒙開拓平和記念館【長野県阿智村】
長野県阿智村の満蒙開拓平和記念館で、黒台信濃村開拓団の一員として旧満州(中国東北部)で過ごし、旧ソ連参戦による逃避行を経験した三石忠勇さん(91)=佐久市=の原画展「逃避行の記憶」が開かれている。三石さんが同館に寄贈した水彩の原画など計19点を展示。終戦後に開拓団員が経験した苦難を伝えている。 同館によると黒台信濃村開拓団は1936年、旧ソ連との国境近くの東安省密山県に入植。終戦時の在籍者は1610人と長野県最大規模だったが、旧ソ連侵攻と現地住民の襲撃を受け、終戦後の難民生活も含めると死者、行方不明者、残留者は計1058人にのぼった。 三石さんは39年に家族5人で満州に渡り、12歳で終戦を迎えた。戦後、引き揚げてきてから絵画を始め、旧ソ連侵攻後の逃避行や難民収容所での体験を描いてきた。 今回展示しているのは、三石さんが発表した油絵のもとになった水彩画18点と油絵1点。雨の中を手をつないで逃げる親子を描いた「カーチャン・アンヨが痛いヨ」や、旧ソ連軍の飛行機の機銃掃射を受けて馬たちが逃げ惑う「ソ連参戦の日」など、三石さんが目撃・体験した壮絶な逃避行の場面がずらりと並ぶ。 三沢亜紀事務局長は「逃避行の苦難を伝える写真や映像はないため、体験者の絵画は大変貴重」と強調。「満州で終戦を迎え、地上戦に巻き込まれた苦しみを想像してみてほしい」と話していた。 開館は午前9時半~午後4時半で、毎週火曜日と第2、4水曜日は休館日。入館料は一般600円、小中高校生300円。問い合わせは同館(電話0265・43・5580)へ。