ONE王者が明かす“号泣土下座”で引退を示唆した武尊の“本当の実力”「私は3ラウンドにボディ攻撃を受けて倒れる寸前だった」
名勝負と言っていい激闘だった。 1、2ラウンドと武尊はスーパーレックが左足を狙って繰り出すローキックをまともに受けてしまった。元来武尊は、スロースターター。様子を見ている間にキックを許したのかもしれないが、ローキックを打たれるリスクを承知でパンチで勝負をかけるために前へ出る戦術が裏目に出た。左足のふくらはぎだけでなく、太ももまでみるみる変色していく。2ラウンドには思わず武尊が足を引きずるシーンも。普通の格闘家なら立っていられなかっただろう。だが、心のキックボクサー武尊は、それでも不屈の魂を持って前に出た。 3ラウンドにもワンツーと右ローのコンビネーションでまた左足を痛めつけられ、ロープに下がるシーンもあったが、ひるまずボディに猛攻撃を仕掛けた。左右のボディブローがめりこみ、スーパーレックが肘で守りにくると、今度は右ストレートを続けざまに顔面に打ち下す。そして再びボディへ。計30連発を超える猛ラッシュに王者の動きは止まってしまった。大逆転へ。会場はヒートアップ。一撃で決まるプロボクシングの2階級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)の試合は、瞬間的な大爆発に会場が包まれるが、武尊を後押しする、それは連打に合わせて、長く続き、“モンスター井上”の時以上のボリュームだった。 それでも王者は耐えきった。 試合後、この場面をスーパーレックは、「3ラウンドの終わりにボデイをもらって、ほんと倒れるかと思った。“男を見せろ”と、自分に言って、生き残るためにすべてを出しきったんだ」と振り返った。 絶対王者をダウン寸前まで追い詰めたのである。 しかし、終わってみれば見せ場は、ここだけだった。ポイントを獲得したのも、おそらく、この3ラウンドだけだっただろう。 左足を完全に殺されてしまったため、パンチにパワーが伝わらない。序盤戦にたらふく浴びたローキックのツケは、5ラウンドの長丁場ゆえに後半に回ってきた。武尊はパンチで応戦するが、足に力が入らず手打ちになり、致命打を与える場所まで届かないのである。最終ラウンドには、左フック、右ストレートをヒットさせたが、その威力が伝わらない。スーパーレックも一杯一杯だった。ゴング間際にはクリンチで逃げにきた。 「世界一の評判の選手。強さがわかっていたので武尊の頑張りに驚きはなかった。私は(彼を)倒すことができなかった。私のパフォーマンスはベストではなかった。(ローキックが)効いていた感触はあったが、彼は準備をしてきた。左右のフックにカウンターをあわせようとしたが、それもできなかった」 スーパーレックは、武尊へのリスペクトを口にした。 当初は那須川天心がキック時代に最も苦しんだ相手であるロッタンとの試合が発表された。ロッタンのケガで変更になったのは年が明けてすぐ。武尊は、サウスポーのロッタンから、キックが主体のスーパーレックへ対戦相手のスタイルが変わることへの戸惑いとモチベ―ションの立て直しに苦労したが、2試合連続で計量で体重超過していたスーパーレックにとっても準備期間の短さは大変だったようだ。しかもONEでは、水抜きが禁止で体内の水分量を測るハイドレーションテストまである。スーパーレックは、今回、栄養士をつけて計量をクリアしたという。
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