日本酒供与は慣習?裏金は印象悪い? ともに汚点抱えた与野党候補の一騎打ちは、立民梅谷氏が勝利
衆院解散から間もないある日。自民党の宣伝カーが新潟5区の湯沢町から南魚沼市、魚沼市へと走った。自民の高鳥修一(64)をアピールするためだ。3市町の有権者数は約8万人。30キロ超の道中、車に手を振ったのは2人だけだったという。 【表】衆院選新潟5区の得票結果 3市町は中選挙区時代、元首相・田中角栄の後援会「越山会」と元環境庁長官・桜井新の「一新会」が激しく争い、自民支持者の多い地域だ。新区割りで上越地域と同じ5区となったが、高鳥の名前はなじみが薄い。とはいえ、この反応の悪さはどうだろう。車に乗った党員は「裏金問題の影響だ」と肌身で感じた。 同じ頃、立憲民主党の梅谷守(50)は魚沼地域を回るためJR小出駅にいた。偶然居合わせた中年の女性たちは梅谷と握手し「やっと会えたね」と笑顔だった。地域行事の主催者に日本酒を供与した問題が2月に発覚して以降、表から姿を消し活動は事実上停止。魚沼地域の開拓も止まった。だが反応は悪くなかった。 魚沼地域での二つの光景。 与野党一騎打ちの選挙結果を暗示していた。 5年間で計544万円の政治資金収支報告書への不記載があった高鳥への風当たりは強かった。街宣で「裏金野郎」とやじを受けたり、指で「×」と示されたりした。県議の中村康司は「無視されるならまだしも、こんなに厳しい雰囲気は初めてだ」とぼやいた。 梅谷も日本酒供与問題を抱えていたが、高鳥選対幹部は「日本酒の持参はある意味、慣習と理解を示す有権者もいる。裏金の方がよっぽど印象が悪い」と解説した。 高鳥の応援弁士の顔ぶれに、渋い表情を見せる向きもあった。高市早苗ら保守系に偏っており「これでは岩盤保守層にしか響かない」と陣営幹部はこぼした。 結局、魚沼3市町で高鳥は梅谷に計4424票差を付けられ、5区全体でも出身地の糸魚川市以外、梅谷に負けた。 2025年夏の参院選を控え、自民は立て直しが急務だ。県議の楡井辰雄は「信頼回復へ愚直に活動していくしかない。難しい道のりだ」と厳しい表情を崩さなかった。 梅谷も当確の知らせに笑顔は控え目だった。日本酒供与問題で自民党員から公選法違反(寄付行為)の疑いで刑事告発されている身。当選のあいさつは問題へのおわびから始まった。