サンゴ群落は温暖化影響で急拡大…種類や「海の森」にも変化 東京湾の“いま”を撮影
日テレNEWS NNN
およそ30年前、東京湾で初めてサンゴが見つかったニュースに人々は驚きました。温暖化によって東京湾はいま、どうなっているのか。日本テレビの水中班が撮影しました。
■南国の海のよう…専門家「サンゴ群落が徐々に広がっている」
今年5月、私たちはサンゴ専門家の筑波大学下田臨海実験センター、アゴスティーニ・シルバン助教とともに千葉・勝山沖の東京湾に潜りました。 海底を埋め尽くしているのはサンゴ。海の人気者、クマノミもいてまるで南国の海のようです。さらに進むと、見えてきたのは東京湾で最大級のサンゴ群落です。近年、急速にその面積を広げているそうです。 アゴスティーニ・シルバン助教 「冬でも水温が下がらなくて、ずっと成長し続けていて、どんどん広がって見えないくらいの距離までに広がっています」 同じ海域を28年前、日本テレビの水中班が撮影した時の映像と、今回の映像と比べてみると、サンゴの面積が広くなっていることがわかります。当時は、サンゴが東京湾で初めて発見されたとして“北限のサンゴ”としてニュースになっていました。 アゴスティーニ・シルバン助教 「サンゴ群落が徐々に広がっています。サンゴをすみかにしている魚たちはある程度増えています」
■水温上昇が影響? サンゴの種類や「海の森」にも変化
さらに、サンゴの種類にも変化がありました。 アゴスティーニ・シルバン助教 「5年前調査したときにめったになかった、エンタクミドリイシが目立つ」 暖かい海に生息しているはずの、テーブルサンゴまで増えていました。若い個体が多く、ここ数年で根付き始めたのでしょうか。 この60年で東京内湾の平均水温は1.4℃上昇。専門家は、この水温上昇によって寒さに弱いサンゴが冬を乗り越え、数を増やしているとみています。 影響はほかにも…。28年前は、サンゴの周りに本州で広く見られるカジメと呼ばれる海藻が茂っているのがわかります。海の生き物たちの餌になったり、すみかとなったりする大切な「海の森」です。 それがいまでは、カジメがほとんどありません。水温上昇のため暖かい海の魚が増え、カジメを食べ尽くすことが主な原因とみられています。千葉県によると、この海域では海藻が生えた「海の森」の面積の6割が失われたといいます。 アゴスティーニ・シルバン助教 「ものすごいスピードで生態系が変化している。温暖化の影響は目立っています」
■「アワビもサザエも…」 私たちの生活にも影響
その影響は私たちの生活にも。 鋸南町勝山漁協・平島孝一郎組合長 「海水温が上がっています。アワビもサザエも取れなくなっている。海藻がない。だんだん海も変わってきている」 温暖化による東京湾の変化が加速しています。