富裕層をターゲットにした税務調査が増加しているワケ【経済のプロが解説】
国税局や税務署は税務調査を強化
富裕層をターゲットにした法改正による増税が進んでいるところですが、国税局や税務署は税務調査にも力を入れています。 国税庁は2014年7月から、東京、大阪、名古屋の3国税局に富裕層対策を強化する「重点管理富裕層プロジェクトチーム」(富裕層PT)を新設し、富裕層をターゲットに申告漏れの所得や資産の把握に努めています。
資産1億円以上の富裕層対策を強化
国税庁は2014年7月から、東京、大阪、名古屋の3国税局に富裕層対策を強化する 「重点管理富裕層プロジェクトチーム」(富裕層PT)を新設し、富裕層をターゲットに申告漏れの所得や資産の把握に努めています。 具体的にどのような基準で富裕層PTが担当するのかは明らかにされていませんが、少 なくとも保有資産1億円以上で、租税回避行為や節税対策が活発な層が該当するものと考 えられます。 さらに、富裕層PTとは別に、東京、大阪、名古屋、関東甲信越の4国税局管内の税務 署に、「上位富裕層担当特別国税調査官」が試行的に配置され、東京国税局管内では世田 谷税務署や麻布税務署など6税務署に配置されています。
富裕層をターゲットにした税務調査が増加
このような体制強化を受けて、税務調査により多額の追徴税額を取られる事案が増えて きています。国税庁は富裕層に対する調査結果を公開しており、これを見ると、令和3事 務年度(2021年7月~2022年6月)に計2,227件の実地調査が行われ、1件あたりの申告漏れ所得金額は過去最高の3,767万円、1件あたりの追徴税額も過去最高の1,067万円となりました【図表2】。 なかでも海外投資等を行っている富裕層の1件あたりの追徴税額は2,953万円に上り、前年度の879万円から大幅にアップしています(図表)。 過去の調査事績を見ると、2020年は新型コロナウイルス感染症を受けて調査件数が 落ち込んでいましたが、これが翌年には大きく戻しています。今後はますます富裕層を狙 った税務調査は増えていくと考えて間違いないでしょう。 髙島一夫 株式会社T&T FPコンサルティング 代表取締役社長CFP 髙島宏修 株式会社T&T FPコンサルティング 取締役CFP 西村善朗 株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所 代表取締役税理士 森田貴子 株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所 パートナー税理士
髙島 一夫,髙島 宏修,西村 善朗,森田 貴子