700円で美味しい「インネパ」、実は背後には”壮絶な貧困”が 親はブローカーや経営者に搾取され、子どもは日本語がわからず困難に陥る
さまざまな外国人の人の話を聞く中で、室橋さんはこう主張する。 「一方ではネパールの厳しい現状の中で、重症の家族のために身を粉にして働いている。でも、もう一方では、お酒を飲んでベロベロになっている。ネパールの人たちも、良いところと、悪いところのある、『人間』だと深く思いました」 ■移民を「人間」として見る目線こそが大事だ 室橋さんは、この、外国人の移民を一人の「人間」として見る目線が大事ではないかという。
「当然のことですが、彼らも働くときは働くし、さぼるときはさぼる、人間なんです。そういう、良い面と悪い面の両方がある。 日本での外国人に対する見方は二極化していると思います。すごく危険な犯罪者だから全員出て行くべきだ、という意見がある一方、とてもかわいそうで保護すべき弱者なんだ、という意見もある。この、どちらかだけになってしまっています。 でも、この2つはどちらとも、外国人を「人間」扱いしてないですよね。かたや「危険なモンスター」だし、かたや「捨てられたかわいそうなペット」のような存在として外国人を見ている状況です。外国人を「人間」として見たり、描いたりすることが必要だと思います」
たしかに『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』には、室橋さんがリアルなネパールの人々と交流する中で見えてきた、彼らの良い面と、悪い面が刻み込まれている。当然のことながら、インネパと一口にいっても、その内実は多様で、簡単に書き切れるわけではない。 清濁併せ呑んだ、室橋さんの視点が、インネパの実情を浮かび上がらせているのかもしれない。
谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター