『虎に翼』土居志央梨が表情に忍ばせる繊細な演技 寅子の“同志”よねから目が離せない
朝ドラ『おちょやん』ではお茶子の富士子を演じた土居志央梨
土居が朝ドラに出演するのは今回が二度目。2020年度後期放送のNHK連続テレビ小説『おちょやん』では、ヒロインの千代(杉咲花)が奉公する芝居茶屋「岡安」の先輩お茶子・富士子を演じ、厳しさの中にある優しさを滲ませた。クラシックバレエで培った身体表現を武器に舞台で活躍する一方、NHK大河ドラマ『青天を衝け』や『初恋の悪魔』(日本テレビ系)、『姪のメイ』(テレビ東京系)といった話題作への出演が相次ぐ土居。表面的な態度の裏に隠された、もしかしたら本人でさえも気づいていない繊細な感情を拾い上げる演技が秀逸で、よねが怒っているときはどこか泣いているようにも見える。 よねが現状、置かれている“地獄”はどのような場所なのか。第3週に入り、女給が男性客を接待するカフェー、今でいうキャバクラでボーイとして働くよねの姿が映し出されるなど、少しずつその現状が見え始めている。おそらく学費や生活費を稼ぐために働いているのだろう。そんな彼女からしてみれば、勉学だけに注力できる環境に身を置く寅子たちは甘いと感じられるのかもしれない。だが、寅子の言う通り、人の本気など目に見えるものではなく、少なからず彼女たちにも学ぶ理由がある。抜け出したい地獄がある。そのことをよねは少しずつ知っていくのだろう。「知らない誰かのために涙して、憤慨するあなたはとっても素敵」と寅子に褒められ、戸惑いのあまりに逃げ出すかわいらしい一面も持ち合わせるよね。寅子に肯定され、よねの頑なな心がほぐれていく様にも注目していきたい。
苫とり子