「復興の象徴に」農家の願い込め 東北のオリーブ、ユズ…特産品へ着々
東日本大震災後、被災地の農家らが「復興の象徴にしたい」との願いを込めて栽培に力を入れる品目の生産が軌道に乗ってきた。宮城県石巻市のオリーブに、岩手県陸前高田市のユズ。加工品としての利用も進み、地域に新たな活気を呼び込んでいる。 【画像】鮮やかな緑色が特徴の石巻のオリーブオイル
宮城・石巻市
緑色の実が連なるオリーブの木を前に、農家らが目を細める。「今年は豊作だね」「暑かったからかね」 2011年の震災に伴う津波によって甚大な被害を受け、集団移転を余儀なくされた石巻市大川地区。オリーブ収穫のために人が集まり、明るい声が畑に響いた。 市の主導でオリーブ栽培が始まったのは14年。定植本数は増え、現在は約2000本を農事組合法人みのりと宮城リスタ大川の2法人が中心となって栽培。当初に植えた苗は成木化が進み、今年の収穫量は目標の1トンを超えた。みのりの千葉昭悦代表は「収穫作業はうれしいね。収穫量はこれからも増えていく。今度はもっと人を集めないと」と期待を膨らませる。 鮮やかな緑色のオリーブオイルに仕上げるため、実が熟す前に収穫するのが石巻産の特徴。オリーブオイルはふるさと納税の返礼品や一般販売に加え、盛んな漁業とも連携し、養殖鮭の餌に使った「オリーブ銀鮭」が開発されるなど、活用の幅は広がっている。
岩手・陸前高田市
震災を一つの契機として価値が見直され、特産となったのは岩手県陸前高田市周辺の「北限のゆず」だ。以前から軒先で栽培されたところ、震災後に多くの支援が入る中「岩手にユズがあるなんて驚いた」「新しい特産になるかも」と関心を呼んだ。これらの声を受け、地元農家らが中心となり、企業の支援も得ながら、13年に「北限のゆず研究会」が発足。本格的な利用を始めた。 現在、約200戸がユズ1000本超を栽培。研究会は、新たに作付けしたり、軒先の収穫を支援したりする。佐々木隆志代表は「震災前は、ユズが売り物になると思う人はほとんどいなかった」と振り返る。「ユズの価値をさらに多くの人に広げたい」と思い描く。 大手食品メーカーや地元企業などが「北限のゆず」を使った商品を開発。アルコール飲料やハンドクリーム、菓子、麺類など20点を超える。コンビニエンスストアチェーンからも引き合いが来るなど、需要が広がる。(音道洋範)
日本農業新聞