月給「50万円」が「17万3000円」大幅ダウンの絶望も… 会社の“賃金規程”を裁判所が無効と判断したワケ
ジャッジ
裁判所 「基本給の引き下げは無効」 「残業代約306万円を払え」 以下、基本給の引き下げが無効と判断された理由について解説します。 ーー 裁判所さん、なぜ基本給の引き下げは無効なのでしょうか? 裁判所 「2人の間で【月額45万円を支払う】との合意がされていたからです。2人の間では、Xさんが当時勤務していた職場の給料と同じくらいという話になっていたし、実際に平成11年12月まではほぼ45万円が払われており、平成15年1月~平成17年12月は50万円が払われていますので。平成15年1月には月額50万にアップするとの合意がなされたと認定します」 ーー 異議あり! 労働契約法第7条には「賃金規程を定めれば労働者全員に適用される」というような内容が書かれてるんですが! ■ 労働契約法 第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。 裁判所 「その条文を最後まで読んでください。Xさんと代表者Yさんとの間で【別の合意】がされていた場合はその合意が優先されるのです」 ■ 労働契約法第7条の続き ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。 ■ 解説 就業規則や賃金規程は会社のルールなので、原則として労働者全員に適用されます。しかし! 上記でご説明したように【会社と従業員との間で別個の合意】があった場合には、その合意が優先されます。「チミは特別だよ」みたいな合意があればそれが勝つのです。 代表者Yさん 「ちょっと待ってください。Xさんからは不満の申し出がなかったので、有効な同意があります」 裁判所 「ゲラウェイ! 同意があったとは認定できませんな。月額50万円から17万3000円のダウンですよ。減額の幅が極めて大きい。Xさんが心の底から同意していたとは言えない(正確には、自由な意思に基づいてされたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在すると認めることはできない)」 ■ 解説 給料などが下げられて「従業員の同意があったのか?」が争われたとき、裁判所はチョー慎重に検討します。給料の減額はチョー重大な事件だからです。 このほか、3年間も減額された給料を受け取ってて文句を言わなかったケースでも裁判所は「減額について同意はなかった」と認定しています。(NEXX事件:東京地裁 H24.2.27)
給料減額がOKとなったケース
今回の事件では一方的な給料減額がNGとなりましたが、従業員との間で別個の合意がなく、さらに全員の給料を減額することもやむを得ないというような状況になったときは、給料の減額がOKになるケースもあります。詳しくは以下をどうぞ。 ■一方的な就業規則変更で「給料減額」 職員196人が“反発”も裁判所が訴えを退けたワケ(https://www.ben54.jp/news/798) 今回は以上です。これからも労働関係の知恵をお届けします。またお会いしましょう!
林 孝匡(弁護士)