「人生、下り坂が最高」共感呼んだ火野正平さんの人生観 自転車好き“相棒”と番組出演も
◇俳優・火野正平さん死去 「希代のプレーボーイ」の印象を残して逝った火野正平さん。NHKBSの「にっぽん縦断 こころ旅」に出演し、視聴者の思い出の地を自転車で訪ね、地元の人と交流する人懐っこい姿が人気となった。時折こぼれる味わい深い言葉も視聴者を引き付けた。「人生、下り坂が最高」には、しゃかりきにペダルをこいで駆け上がる上り坂よりも、こがなくても快適に進む下り坂の方が好きだという人生観がにじんだ。 下り坂では笑顔だったが、高所恐怖症で橋が近づくと表情が曇った。一方、突然川に下りて魚をつかむ奔放さなど、飾らぬ姿が魅力的だった。 小学生の頃からの自転車好き。子役時代に出演したフジテレビドラマ「少年探偵団」のギャラのほとんどを自転車につぎ込んでいたという。番組出演は61歳から。お騒がせ男と自覚していただけに、本紙にオファーが来た際の思いを「何で俺を選んだのか、さっぱり分からなかったけど、おかげで夜中に(旅先で)チョロチョロできる」と語っていた。 長年ロードバイク「チャリオ」に乗ってきたが、今年から電動アシスト付きの「チャリ丸」を投入。「酒と女は2合(号)まで」の“格言”にちなみ自転車も2号とおちゃめに紹介した。“相棒”との旅の続きへの期待は高く、視聴者からも惜しむ声が上がっている。 《池波正太郎から1文字取り命名》 12歳の頃から「劇団こまどり」に所属し、本名の二瓶康一でデビュー。73年にNHK大河ドラマ「国盗り物語」への出演が決まった際、65年の大河「太閤記」に主演しブレークした緒形拳さんにあやかろうと改名。火野さんの当時の所属事務所の社長が「鬼平犯科帳」などの作者であった作家・池波正太郎さんと交流があり、池波さんが自身の名前から「正」の1文字を取り命名した。のちに字画を調べると「スキャンダルに気をつけろ」との姓名判断が。不倫騒動で常に渦中の人だった火野さんは、本紙のインタビューに「遅いっちゅうねん!!」とツッコんだこともあった。 《「必殺」挿入歌をぼやきから制作》 アーティストとしての顔も持つ。きっかけは「必殺」シリーズ。スタッフの「新しい音を使いたいけれど、お金がかかる」とのぼやきを聞き「ほんなら作ったらええやないか」と友人のギタリストを伴い、酒を手に録音部にこもった。そこで生まれたのが新・必殺仕置人17話の挿入歌「想い出は風の中」。40話で使われた「海」では作詞・作曲も務め、同曲などを収めたレコードで1977年に歌手デビューも果たした。2023年は、自らシンガー・ソングライターRio(47)に制作を依頼し、14年ぶりの新曲「あかんたれ」をリリース。バンドを率いて、東京、大阪など5カ所を巡るツアーを初開催した。