鹿児島市長選挙17日告示・24日投開票…「人口減」「公共交通網の維持」様々な課題、かじ取り役は誰に
鹿児島の県都のかじ取り役を誰に託すのか。17日告示、24日投開票の鹿児島市長選を前に、人口減や公共交通網の維持などの課題を探った。(横峯昂) 【写真】鹿児島市役所
公共交通網の維持
「今は主人が元気だから何とかなっているけれど……」
鹿児島市郡山町の女性(81)は週3回ほど、市中心部の病院に通っている。最寄り駅まで夫(87)に車で送ってもらい、電車やバスを乗り継いでいる。
市電の電停やバス停から離れていたり、高齢者ら交通弱者が多く住んでいたりする「公共交通不便地」は、市内16か所に点在している。市はこれらの地域でコミュニティバスや乗り合いタクシーなどを運行するが、地域によって利用にばらつきがあり、効率的な運行方法の模索が続く。
女性の暮らす地区でもコミュニティバスが走るが、駅に着くまでに他の地区も巡回して時間がかかるため利用したことがないという。女性は「今後のことを考えると不安だ」とこぼす。
人口減対策
住民基本台帳によると、市人口は2014年の約60万9200人をピークに減少傾向が続き、今年10月時点で約59万1600人。国立社会保障・人口問題研究所の推定では、特段の施策がない場合、50年には50万人を割り込むとされる。
市は人口ビジョンで60年の人口目標を「51・5万人程度」に掲げる。だが、近年の合計特殊出生率は県平均を下回る1・50以下の水準で推移。進学や就職をきっかけに市外へ出る若者も少なくない。
今年、第1子が誕生した同市郡元、薬剤師(31)は「保育園の料金の値下げのほか、児童館などの乳幼児が安心して遊べる場を増やしてほしい」と求める。
観光振興
いかに世界に発信し、観光客を呼び込むかは、将来の街のあり方を大きく左右する。
昨年、市内を訪れた観光客は900万9000人、宿泊客は377万9000人。経済波及効果は約1650億円となり、新型コロナ禍前の19年の水準に戻りつつある。
市は22年に策定した「観光未来戦略」で、26年にコロナ禍前を上回る宿泊客400万人、経済波及効果2200億円の目標を掲げる。鍵を握るとみるのが訪日外国人客(インバウンド)だ。しかし、昨年の外国人宿泊客は21万7000人で19年の約4割にとどまっており、十分な回復には至っていない。
天文館商店街振興組合連合会の平岡正信・代表理事(56)は「インバウンドは増えてきているが、小売業への波及効果は少ない。さらに誘客に向けた取り組みを実施し、観光客に商店街の店舗や割引などを知らせるような仕組みづくりを期待したい」と話した。