「八犬伝」が問いかける善悪、栗山千明&土屋太鳳が語る物語の魅力:インタビュー
俳優の栗山千明と土屋太鳳が、『八犬伝』(全国劇場にて公開中)に出演。栗山千明は闇を司る八犬士最大の敵・玉梓、土屋太鳳は里見家の姫・伏姫を演じる。日本のファンタジー小説の原点と称えられる「南総里見八犬伝」。 伝説的な古典小説の作者・滝沢馬琴の執筆への情熱を、葛飾北斎との交流を交えて壮大な構成で現代に蘇らせたのが、山田風太郎の「八犬伝 上・下」。今回、この山田風太郎の傑作小説をダイナミックかつ緻密なVFXを駆使して実写映画化。 圧倒的スケールで描く八犬伝【虚】と物語を生み出した馬琴の感動の実話【実】が交錯するエンターテインメント超大作が完成した。インタビューでは、本作で演じ、完成した映像を観て何を感じたのか。お互いの印象や守っていきたいものについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 【写真】栗山千明&土屋太鳳アザーカット ■これまでの「八犬伝」とは違う魅力が伝わったら ――『八犬伝』ということで、お二人は犬は好きですか。 栗山千明&土屋太鳳 犬、大好きです! 栗山千明 今日も取材で「八房、可愛いよね」と話していました。(※八房は「南総里見八犬伝」に登場する霊犬) 土屋太鳳 私は大型犬、ゴールデン・レトリバーを飼っていたので、撮影のときに八房をイメージできて、演じやすさがありました。 ――栗山さんも過去にペットを飼っていましたよね? 栗山千明 はい。過去にトイプードルを飼っていたのですが、お別れしてから次に行けなくて...。もし、また良い出会いがあったらという気持ちはあります。ただ、仕事で家にいない時が多いので、仮にお迎えしても寂しい思いをさせてしまうというのもあります。 ――良い出会いがあるといいですね。さて、今回の『八犬伝』は作者である馬琴のお話と八犬伝の物語パートが交互に展開していきますが、これについてはどう感じましたか。 栗山千明 最初は八犬伝の物語パートがメインの映画なのかなと思ったのですが、脚本を読んで全貌がわかった時に、どう組み上がるのかとても楽しみでした。完成した作品を観て、脚本を読んだだけではイメージできなかったところがわかり楽しかったです。いろいろなものが交差して、重みのある作品になっているなと思いました。これから観てくださる皆さんには、これまでの「八犬伝」とは違う魅力が伝わったら嬉しいです。 土屋太鳳 今回の『八犬伝』はいろいろな視点があり、【虚】と【実】の世界、今だからできる最新の技術が合わさるなど、いろいろな軸がある中で、この作品が作られています。令和という時代ならではの作品として、とても興味深いなと思いました。 ――お互いの芝居を観てどのように感じましたか。 栗山千明 配役を聞いたときから、伏姫は太鳳ちゃんのイメージにピッタリだなと思いました。きっと本作を観た方は、伏姫のことを守ってあげたい、どうにかしてあげたいと思ってもらえるんじゃないかなと。 土屋太鳳 そう言っていただけて嬉しいです。栗山さん演じる玉梓も圧巻でした。その玉梓を観ていて、彼女は処刑された恨みをはらすため、怨霊となるわけですが、もともとはそれほど伏姫と変わらない気持ちを持っていたのではないかと思いました。きっと伏姫も何かあったら刀を出すぐらいの覚悟を持っていたと感じましたし、伏姫と玉梓は表裏一体なんじゃないかと思いました。 ――お2人は『図書館戦争』でも共演されていますが、役者として刺激を受ける部分もありますか。 栗山千明 太鳳ちゃんはやっぱりすごいなと思いながらいつも観ています。今回伏姫を演じている姿には、儚さと強さの両方が見事に表れていて感動しました。先ほどの取材で「八犬士もやってみたかった」とお話を聞いて、きっと八犬士も高いクオリティでできるだろうなと思いました。振り幅がすごくある俳優さんであり、素晴らしい表現者だなと尊敬しています。 土屋太鳳 嬉しいです。私は『図書館戦争』に出演していた頃なんて、ほとんどお仕事もしていなく、栗山さんをはじめ、こんなすごい方々の中に、私がいてもいいんだろうかと思っていました。栗山さんはずっと私にとって憧れの方であり、どんどん美しさが磨かれていく大人な俳優、女優さんだと思っています。10代の頃、もっと這い上がっていきたいという気持ちもあったので、栗山さんにはすごく刺激を受けました。 栗山千明 すごく嬉しいです! 太鳳ちゃんに褒めてもらったと自慢しよう(笑)。 ――さて、お2人が特に印象に残っている撮影は? 栗山千明 冒頭で玉梓が処刑されるシーンです。それ以外はほぼスタジオでグリーンバックでの撮影でした。外に出てのロケで怨念の始まりという大事なシーンでもあったので、撮影は2年くらい前になるのですが、今も強く印象に残っています。私はこのシーンが自分の中で納得できるお芝居ができたら、その後は大丈夫なんじゃないかと思っていました。緊張して撮影していたのを覚えています。 ――あのシーンの栗山さんの表情、すごかったです。ゾクっとしました。 栗山千明 自分だと自分が怖い顔していても怖いんだか、なんだかよくわからないのですが、そう言っていただけて安心しました。 ――土屋さんの印象的だった撮影は? 土屋太鳳 伏姫が八房に乗って走っていくシーンと、空から降りてくるシーンが印象に残っています。お着物を着てワイヤーで吊られるのは初めての経験だったので、貴重な経験でした。 栗山千明 あのシーン、すごく綺麗でした。さらっとやっているように見えていたけれど、一定のスピードで動じずに綺麗な姿勢で降りてくるのは、大変だったんじゃないのかなと思いました。 ――神々しかったです。 土屋太鳳 すべてVFX(視覚効果)のおかげです(笑)。 ■2人が守りたいものとは ――今回この作品では、正義や言葉の重みなどいろいろキーワードがあったと思うのですが、学びや発見はありましたか。 栗山千明 正義と悪というのは永遠のテーマだと思っていて、私自身も正義とは何か、悪とは何かについて真剣に深く追求したことはなかったのですが、この作品を見て改めて自分の中で正義とは何なんだろうなと考えた時に、両方あるから成立することっていっぱいあるなと思いました。それらと真剣に向き合って、自分の答えを探していくと、さまざまな考えだったり、自分らしさみたいなものが出てくるんじゃないかと思いました。両方あるから成立することをもっと追求していきたいですし、自分の思いをしっかり見つめ直していきたいです。そうすることで芝居の表現なども変わっていくのではないかと思っています。 土屋太鳳 伏姫が八房に嫁ぐと決めたシーンで、昔の人達はどこに嫁ぐのかもわからない、誰かもわからない相手のところに行くかもしれない。 それはすごく覚悟があったと思います。だからこそ、今を大切に生きたいという強い思いを感じました。なぜ伏姫が玉梓みたいにならずに済んだのかといえば、八犬士がいたからだと思います。守りたいと思う存在がいることはとても大切なことなんだと改めて思いました。 ――最後にお2人が守っていきたいものはありますか? 栗山千明 ちょっと抽象的な答えになってしまうのですが、大きな力が自分にあれば、分け隔てなくみんなを守りたいと言いたいところなのですが、それは難しいことなので、少なくとも自分の身近な人だったり、自分を支えてくれている人を守っていきたいです。 土屋太鳳 家族はもちろんなのですが、今まで出演した作品を裏切らないようにしたい、守りたいという気持ちがあります。同じ役者さんの中で、この作品を観て東京に出てきました、自分が出演した作品がきっかけになりました。などを言ってくださる方が増えました。そういったことを、胸を張って言っていただけるように、自分が出演した作品を大切にしたいという気持ちが、最近さらに強まったように感じています。 (おわり) 【土屋太鳳】 スタイリスト 小川未久 ヘアメイク 石川ユウキ(Three PEACE) ニットワンピース/メゾンスペシャル(メゾンスペシャル 青山店) アクセサリー/イー・エム(イー・エム青山店) 【栗山千明】 スタイリスト ume ヘアメイク 奥原清一(suzukioffice) ディウカ/ドレスアンレーヴ 1DKジュエリーワークス/ドレスアンレーヴ