福島県南相馬市の避難指示解除8年 人口の伸び鈍化 産業再生や起業進む
東京電力福島第1原発事故の発生で福島県南相馬市に出された避難指示が帰還困難区域を除き2016(平成28)年7月に解除されてから12日で8年となった。生活や産業の基盤が整う一方、ここ数年は人口の増加が伸び悩んでいる。市は効果的な移住・定住の促進策を模索している。 全域が避難区域だった小高区の居住者は5月末で3858人。前年同期に比べ8人増えた。2011年2月末の住民基本台帳に基づく人口が1万2834人だったのに比べると、3分の1以下だ。避難指示解除後の居住人口を見ると2017年3月末は1488人、2020年3月末は3620人。順調に増えていたが近年は頭打ちの状況となっている。門馬和夫市長は8日の定例記者会見で「帰還を促すとともに、移住者の受け入れに力を入れなければならない。暮らしやすく、チャレンジしやすいまちを目指す」と話した。 市は旧鳩原幼稚園に農業人材の育成研修機関「みらい農業学校」を設置した他、飯崎産業団地の供用を今年度、開始した。川房地区に育苗施設と野菜加工施設を備えた園芸施設を建設する計画もあり、産業の再生は着実に進む。
移住者による起業も活発だ。2017年から市の「起業型地域おこし協力隊」の募集や支援に当たる小高ワーカーズベースによると、これまで19人の隊員が着任した。3年で卒隊となるが、5人が起業して市内に定着したという。 小高区出身で小高ワーカーズベース社長の和田智行さん(47)は「今の小高は希望が見えるまちだ」と表現する。自身が理想とする「新しい事業が当たり前に生まれるまち」に近づきつつあると受け止めているという。「『小高モデル』として実践し、社会全体をよくしたい」と将来の展望を描いている。