専門家は否定、1月5日の東京の「地鳴り」騒動は地震の前兆なのか?
1月5日に東京都内で地鳴りのような音が聞こえたとの情報がネット上に多数流れ、話題となった。果たして、ネットで騒がれているように、今回の地鳴りは大地震の前兆なのだろうか。 当たって当たり前?「MEGA地震予測」を科学的にどう見るか
ネットで話題になった「地鳴り」
1月5日、ツイッター上で、「地鳴りが発生した」というツイートが多数投稿された。Yahoo! JAPANが提供する検索サービスにおいても「地鳴り」の検索件数が急増し、6日更新の検索ランキングでは第3位にランクインした。これらを見る限り、少なからぬ人数が地鳴りを体感したり、気になったりしたようだ。また、つられるように「大地震の前兆ではないか」と懸念する内容の投稿も見られた。 地鳴りについて、気象庁地震津波防災対策室に聞いたところ、「1月5日は特段大きな地震などは発生していない」と説明する。地鳴りに関する情報はいくつか寄せられたものの、それ自体を特に重視することはなかった。
地震の前兆として考えるのは早計
地鳴りとは、地震などによって地盤の振動する音が聞こえる現象、もしくはその音を指すが、地鳴りは、地震の前兆なのだろうか。日本地震予知学会会長で電気通信大学の早川正士名誉教授は、「地震予知と地鳴りの関係はいまだ科学的に解明されておらず、地震の前兆として考えるのは現時点で早計」と指摘する。 地鳴りが発生するメカニズム自体、ほとんどわかっていない状況だ。東海大学地震予知研究センターの長尾年恭教授は、「地鳴りの研究に取り組んでいるという人の話は聞いたことがない。観測自体、どこで行なえば良いのかもわからず難しい」と話す。地震に伴う地鳴りが聞こえやすいかどうかは、地学的な特徴にもよる。「たとえば、筑波山(茨城県)は比較的聞こえやすいが、東京ではほとんど事例がない」(長尾教授)という。 ただ、「地下で岩石が崩れた時には地震計が検知するはず」として、今回の地鳴りを大地震の前兆とする見方については疑問視する。
地鳴りに似た音が発生する原因は?
地鳴りおよび地鳴りに似た音が発生する原因としては、他に何が考えられるのだろうか。長尾教授によると、上空の大気の温度差で音が屈折する現象によって、100~150km先といった遠くの大きな音が聞こえることがあるという。このほか、火山活動や隕石の落下などによっても同じような音が発生することがある。 結局、今回の音の原因は今のところ不明で、地震との関係もわからないが、東日本大震災が発生してから間もなく5年が過ぎようとしている今日、この一件を、改めて防災に対する意識と準備を見直すきっかけにしてはどうだろうか。 (取材・文:具志堅浩二)