『厨房のありす』が教えてくれる“相手を尊重すること”の大切さ 永瀬廉の姿に泣けてくる
まだまだベールに包まれたままのありす(門脇麦)たちの過去
一方で、長い年月を共にしていても、そこにあぐらをかいていたら一瞬にして信頼関係が崩れることもある。和紗は夫の金之助(大東駿介)がキャバクラに行ったことが許せなかった。「ありすのお勝手」の常連である雅美(伊藤麻実子)は夫の敬(近藤公園)が洗い物をしないことに腹を立て、家を出ていく。敬のように、「それくらいで?」と思う人もいるかもしれない。だけど、誰にだって譲れないことはある。たとえ、それが自分には無意味に思えたとしても、相手にとっては大事なことなのだと理解し、否定しない。それが“尊重する”ということであり、人と人が上手く付き合っていくために必要なことなのではないだろうか。 倖生はありすが大切にしているルールをないがしろにしたり、途中で投げ出したりしなかった。必死に覚えようとメモを取る倖生の姿になぜだか泣けてくる。まだ出会って間もないけれど、心護もそんな倖生の姿を見て少し安心したようだ。ありすにもまた、倖生の不器用な優しさは伝わり、最初はどうなることかと思った3人の同居生活に光が差した。 ただ、まだまだ彼らの過去はベールに包まれたまま。心護に「なぜそこまでありすに寄り添ってくれるのか」と聞かれた倖生の「助けが必要な時に誰もそばにいてくれなかったり、辛い時に周りに味方がいないとか。そういう時の気持ち……分かるんで」という言葉も気になる。少なからず、彼にはありすの料理を食べて涙が出てくるほどの辛い過去があるのだろう。一方、ありすが五條製薬の蒔子(木村多江)を母親と認識していることも明らかに。それを知らないふりをしているのもまた、心護と生活を続けていくための“努力”のようだ。心護の方は何を守ろうとしているのか。抜けているようで、一番底が知れない人物かもしれない。
苫とり子