【RIZIN】弥益ドミネーター聡志「新居選手は“昔の自分”に近い」、朝倉未来KO負けの「構造はシンプル」=大晦日連続インタビュー(7)
2023年12月31日(日)『RIZIN.45』(さいたまスーパーアリーナ)のオープニングセレモニー前の第4試合・フェザー級(66kg)戦で、元DEEP同級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)が約1年1カ月ぶりに復帰。現PANCRASE同級王者の新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT)と対戦する。 【写真】弥益の前戦は、平本蓮を相手にダウンを喫しての判定負け RIZIN初参戦で朝倉未来に敗れ、ベイノア、萩原京平を相手に2連勝。2022年11月の前戦で平本蓮と70kg契約で対戦し、度重なるダウンの末に、判定負けを喫した。 再起戦の相手は、PANCRASEでベルトを巻いてRIZINに戻って来た新居だ。弥益は、サラリーマンとして働きながら、かつて憧れたファイターたちが戦った舞台を継ぐリングでの試合に向け、しっかり身体を作って「大晦日に“格闘家の役”ができる」と嘯いた。その真意とは? ◆最低に転がり落ちて、大晦日にチャンピオンとやる。「いいんかそれで、お前」って ――弥益選手は、前回の本誌のインタビューで、平本蓮戦を「一つの試合としては消化できているけど、個人的な部分が未消化なまま」と発言しました。仕事・家族を持ち、身体的なダメージも考えるなかで、再びリングに上がることを決めたこと、それが大晦日の試合であることについては、どうとらえていますか。 「そうですね……まずはいいんかなっていう。前戦で負けて、言ったら平本選手は、もちろん今はもう強さを証明できていると思うんですけど──それでもやっぱり自分とやった頃なんてまだ駆け出しじゃないですけど、ようやく1勝したくらいのタイミングで、その選手に負けた」 ――平本戦はフェザー級の試合ではなく、70kg契約でしたが……。 「最低に転がり落ちたと思っているので。かつ1年間何もやってない、表にも出てない、他の人のYouTubeで他の人の試合を偉そうに喋ってるくらいしかやってない人間が、大晦日という場所でいいんかって。かつ対戦相手もこの間、PANCRASEでチャンピオン取ったばかりだろう。“いいんかそれで、お前”っていう思いは正直あります。でも、だからこそすごくありがたいことというか、あり得ないことだと思っていますし」 ――練習をすることで成長を感じて、またそれを試したくなる。それは今でも同じですか? 「だんだん考え方が逆になってきたというか、試合をして、試合を経て成長して、それを練習で出したいな。で、先輩に褒められたいなという」 ――いまだにそういう──弥益選手が認めるところの格闘家にファイターとしての成長を褒められたいと……。しかし、「次は“弥益が勝つだろう”的な相手ではなく、上の人とやってみたい」と希望していた弥益選手にとって、またも門番的な役割の試合が組まれたという見方も出来ます。弥益選手は「チャンピオンを取ったばかりだろう」とは言っていましたが、新居選手はRIZINでは1勝2敗。そして、新居選手とはこれまでに練習したこともあるのではないですか。 「そうですね、1回くらい練習したことあると思います。新居選手が佐野哲也選手と練習していたということは、東京の清水俊一さんが主催されてる練習会にもたぶんいらしていたので、わりと近い場所にずっといたというイメージはあって。たぶん東京出てからなので、2017年とか2018年くらいですね。 GENスポーツパレスかどこかで練習して、もしかしたら茨城時代にもちょっと絡んだことがあるかもしれないです。自分がアマチュアの頃から存在は存じ上げていましたし、なんとなく周りにいる人だなという印象がずっとあったので、まさかこんなところで巡り合うか、という感慨深さみたいなものはあります」 ◆あのアームロックは「天変地異」みたいなもの。MMAとしてはいびつ ――以前聞いたときは海外選手とも対戦してみたいと言っていましたが……。 「彼もコンバ共和国というところの王子なので、たぶん外国人だと思うんですよ。こんな、今の格闘技ファンが誰も知らないようなネタですが(苦笑)」 ――新居選手は「コンバ王子」時代からアームロックが得意技でしたね。弥益選手と練習したときにアームロックは? 「もらいました、もらいました。取られましたね。あれはもうしょうがないです。練習では“天変地異”みたいなものです。人の力では抗えないアームロックなので」 ――天変地異……それは弥益選手のアームロックの技術体系とは違いますか。 「違いますね。自分はイメージとしてはどっちかというと中村大介選手とか、展開を作るため。より展開を面白くするためのアームロック。彼のはもう全部そこでシャットアウトするためのアームロックなので。ちょっとやっぱり方向性は違うかなという感じはしますね。それを会見でふられた新居選手が『弥益選手もアームロックが得意なんですか?』みたいな。あれ、俺すごく恥ずかしかったんですけど。勘弁してくれよと思いました(笑)」 ――すみません(笑)。ともあれ、弥益選手がアームロック使い“でも”あることはたしかで、そのアームロック&シザースチョークに特化している新居選手の最近の強さをどうとらえていますか。 「本当に開き直っている、いい意味で。以前はここまで開き直れてはなかったと思うんです。俺はこれしかないんだって開き直れて、じゃあそれ生かすためにどうすればいいのというのを、万遍なくやるんじゃなくて、最後の終着駅を決めて、そこに必要なものだけ、材料だけ集めている。だから試合中迷いもないと思いますし。そういう意味ではわりと“昔の自分”に近いというか。 自分ももともと新居選手みたいに本当に出来ることが少なかったんですけど、だからこそ迷いがなくて勝ってきたところももちろんあって。でも、やっぱりさすがにいろいろやっているとだんだん選択肢も増えてきて、対戦相手によってやることも変えなくちゃいけないとなると、何となく迷いが出たりとか、固執する気持ちが薄れていったりとかする。だからこそかつての自分のようでもあり、それを超える、さらに尖らせたような存在だなという印象はあります」 ――トガってはいますが、MMAとしてはいびつではないですか。 「いびつですね、本当に。それはちょっと難しくて。いびつな選手とやるのってあんまり競技感が無いというか、“斬り合い”みたいなところがあると思う。試合と言うより死ぬほうの“死合”みたいな意味で恐怖があって。でも、アームロック以外のところは、そんなに尖ってないから、ちょっと面持ちが競技ではないんですよね、自分の中で。でも、やっぱり彼はそのスタイルでPANCRASEという団体のトップを取ったわけじゃないですか。だから、競技も引っ提げてきてくれたなと。死合に競技性をかついで俺のところに来てくれた。だから本当にありがたいなと。彼単体だったらたぶんその競技路線と胸を張って俺は言えなかったんですけど。でもそれ(ベルト)を討ち獲ってきてくれたので、感謝しかないですね」 ――いま大晦日の新居戦に向けての練習環境というのはどうなっているんですか。 「とくに変わってないというか、本当に日々の生活にひも付いた、仕事に無理のない範囲での練習を続けているので、その中でとくに何か新居選手との試合が決まったからここを変えようとか、練習場所を変えようとか、正直あまり考えてないですね。今のルートの中でどう対策をしていくか。今の中で、今持っているカードで戦う。練習環境ももちろんカードだと思っているので、そのカードをどのタイミングでどういう風に出すかというのが大事だと思っているので、そこを考えています。それに合わせて布陣や出し方を変えていくというイメージでいます」 ──さきほど「以前の自分と戦うような試合」だと言いました。いま、MMAのトータルとしては、弥益選手に分があるのではないですか。 「彼も紆余曲折を経て、積み重ねた上で今のスタイルに辿り着いて、連勝してタイトルマッチで勝った。自分も同じようにベルトを獲って、そこから迷いや怖さを知った。その持ち札は、自分の方が多いと思っています」
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