「町中に『戦争反対』のステッカーを貼るの!」平和を訴えていた幼い少女にまで襲い掛かるロシア警察の「魔の手」
「あなたにはまだこの戦争が必要なのか?」
短い白髪の初老の女性が近くにいた。刺繍の入ったベストを着て、『戦争反対』と書かれたキャンバス地のバッグを肩から下げていた。 「わたしはウクライナにルーツを持つモスクワっ子です」 彼女はそう言った。 翌日、警官はこの女性を捕まえ、護送車に押し込もうとした。数十人の男女が彼女を守ろうと行動を起こし、武装警官の毒牙からこの勇気ある女性をもぎ取った。 わたしたちが外にいる間に、法廷ではゴリノフに対して不条理な判決が言い渡された。 「政治的憎悪を動機とし……その公的な地位を利用して、ゴリノフはロシア軍の活動に関する虚偽情報を意図的に流布した」 ゴリノフ被告は罪を認めなかった。ガラスの衝立の中で、「あなたにはまだこの戦争が必要なのか?」と書いた紙を掲げていた。 「懲役7年」 裁判官が言った。ゴリノフの奥さんは法廷で泣き崩れた。 夜、わたしは憤懣やるかたなく、じっとしていられなかった。ロシアの何百万もの人びとと同様、わたしは新しい現実に唖然としていた。冷笑を浴びせるように、そして過酷に、権力は罪のない人間の7年分の人生を奪った。ゴリノフはもう若くはない。刑務所は彼の命を奪うことになるかもしれない。 これは虚偽情報に関する刑法改正条文によって刑期が言い渡された最初のケースだった。戦争でロシアの旗色が悪くなればなるほど、政治的弾圧はますます過酷になっていった。 『「群衆の中には〈E〉の連中がたくさんいる」…ロシアの反戦集会に潜む政治警察が反体制者を摘発するヤバすぎる手口』へ続く
マリーナ・オフシャンニコワ